越境がある不動産は売却できる?境界・覚書など売主が確認するポイントを解説

境界・土地

不動産を売却するために土地や建物を調査すると、隣地との間で「越境」が見つかることがあります。

例えば、

・隣地のブロック塀が自分の土地に入っている
・自宅の屋根や軒が隣地にはみ出している
・フェンスが境界線を越えている
・隣地の樹木の枝が伸びてきている
・給排水管が隣地を通っている

などです。

越境が見つかると、

「越境を解消しないと売却できない?」
「隣地との覚書は必要?」
「そのまま買主へ引き渡しても大丈夫?」

と心配になる方も多いと思います。

結論からいうと、越境があるからといって、不動産を売却できないとは限りません。

重要なのは、越境の位置や内容を確認し、必要に応じて隣地所有者との取り決めを行い、その内容を買主へ引き継ぐことです。

この記事では、越境がある不動産を売却するときに売主が確認しておきたいポイントを、実際の不動産売買の流れに沿って解説します。


■不動産の「越境」とは?

越境とは、建物や工作物、樹木などが土地の境界線を越えて、隣の土地に入り込んでいる状態です。

不動産売買では、

「境界がどこにあるのか」「その境界線を何かが越えているのか」は分けて考える必要があります。

例えばブロック塀があったとしても、そのブロック塀自体が境界とは限りません。

測量などによって確認した境界線とブロック塀の位置がずれていれば、越境している可能性があります。

そのため、見た目だけで「越境している」「越境していない」と判断するのではなく、まず境界の位置を確認することが重要です。


■よくある越境物にはどんなものがある?

不動産売買で確認される越境には、さまざまなものがあります。

代表的なものとして、

・ブロック塀
・フェンス
・屋根
・軒
・雨樋
・庇
・樹木の枝や根
・擁壁
・給水管
・排水管

などがあります。

地上から確認できるものだけではありません。

例えば、自分の家で使用している給排水管が隣地を経由していたり、反対に隣地の配管が自分の土地に埋設されていたりすることもあります。

このような場合は、単純に「何センチ越境している」という問題だけではなく、将来の修理や建替え、配管のやり替えなども考えて整理する必要があります。


■越境には2つの方向がある

越境を確認するときは、どちら側から越境しているのかも重要です。

1. 自分の所有物が隣地へ越境している

例えば、

・自宅の屋根が隣地へ出ている
・自宅のブロック塀が隣地に入っている
・自宅の雨樋が境界を越えている

などです。

この場合、売却する不動産側から隣地へ越境していることになります。

買主が購入したあとも越境状態が続くのであれば、その状態をどのように扱うのか整理しておく必要があります。

2. 隣地の所有物が自分の土地へ越境している

反対に、

・隣地の屋根が入っている
・隣地のブロック塀が入っている
・隣地の樹木が越境している
・隣地の配管が埋設されている

というケースもあります。

この場合は、買主が購入後も隣地からの越境を受けることになります。

どちらの場合でも、「越境がある」というだけでなく、誰の所有物がどちらへ越境しているのかを明確にすることが大切です。


■越境がある不動産でも売却できる?

越境があるからといって、必ず売却前にすべて解消しなければならないとは限りません。

例えば屋根の一部が数センチ越境していることが判明しても、すぐに建物の一部を撤去することが現実的ではない場合があります。

そのような場合には、

・越境している位置を確認する
・越境物の所有者を確認する
・隣地所有者と越境について確認する
・必要に応じて覚書などを取り交わす
・買主へ越境内容を説明する
・売買契約で取り扱いを明確にする

などの対応を行ったうえで売却する方法があります。

つまり、「越境がある=売却できない」ではなく、「越境の内容を把握したうえで、買主へどのような状態で引き継ぐのか」が重要になります。


■まず境界がどこにあるのか確認する

越境を確認するためには、その前提として土地の境界が分からなければなりません。

例えば、

ブロック塀が隣地に入っているように見える」としても、境界線そのものが分からなければ正確な判断はできません。

確認する資料としては、

・境界標
・確定測量図
・地積測量図
・境界確認書
・過去の測量資料

などがあります。

ただし、資料があるからといって、必ず現在の境界が確定しているとは限りません。

境界標が見つからない場合や、隣地所有者との境界確認ができていない場合などは、土地家屋調査士へ相談して測量を行うこともあります。

境界確定測量が必要になるケースや、測量の流れはこちらで詳しく解説しています。

■越境は測量で初めて分かることもある

売主自身が長年住んでいても、越境に気付いていないことがあります。

例えば、見た目では境界上にあると思っていたブロック塀が、測量すると数センチ隣地へ入っているケースです。

反対に、隣地のブロック塀が自分の土地へ入っていることが分かる場合もあります。

また、屋根や軒などは地上部分だけを見ても判断しにくいことがあります。

そのため、土地を売却するときに確定測量を行った結果、「これまで知らなかった越境が判明した」

ということもあります。

越境が見つかった場合は、その事実を隠すのではなく、どのように処理して売却するのかを検討します。


■越境物は売却前に必ず撤去する必要がある?

越境物を売却前に撤去できるのであれば、越境を解消した状態で引き渡す方法があります。

しかし、すべての越境を簡単に解消できるとは限りません。

例えば、

・建物の屋根や軒が越境している
・建物と一体になった構造物が越境している
・隣地所有者の工作物が越境している
・地下の配管が越境している

といったケースでは、撤去や移設に大きな費用がかかることがあります。

そのため、

売却前に越境を解消する

だけではなく、

現在の越境状態を確認
↓
隣地所有者と協議
↓
必要に応じて覚書を作成
↓
買主へ内容を説明
↓
現状のまま引き渡す

という方法を取ることもあります。

どの方法が適しているかは、越境物の種類や程度、隣地との関係、買主の意向などによって異なります。


■越境に関する「覚書」とは?

越境をすぐに解消できない場合、隣地所有者との間で越境について覚書を取り交わすことがあります。

例えば、

「現在の越境状態について双方が確認している」
「将来建物を建て替えるときに越境を解消する」
「工作物を再築するときは越境しないようにする」

などの内容です。

実務では、現在存在する建物を数センチの越境だけを理由にすぐ改修することが難しいケースもあります。

そのような場合に、現在の状態と将来の対応を明確にしておくことで、売却後のトラブルを防ぎやすくなります。

ただし、覚書の内容は物件ごとに異なります。

単純にインターネット上のひな形を使用するのではなく、越境の状況を確認したうえで不動産会社や土地家屋調査士などと相談して作成した方がよいでしょう。


■「将来撤去」の覚書を作る場合に確認したいこと

越境覚書では、

「将来建替え時に撤去する」

という取り決めが行われることがあります。

ただし、この一文だけでは十分ではないケースもあります。

例えば、

・何が越境しているのか
・どちらの所有物なのか
・どの位置で越境しているのか
・いつ解消するのか
・建替えだけでなく改修時も対象にするのか
・費用を誰が負担するのか
・土地や建物を売却した場合にどうするのか

などを確認しておく必要があります。

特に不動産を売却するのであれば、現在の所有者だけでなく、将来の所有者へどのように引き継ぐのかも重要です。


■越境覚書があれば必ず売却できるわけではない

越境覚書があるからといって、すべての買主が問題なく購入するとは限りません。

例えば、

・越境の程度が大きい
・建築計画に影響する
・将来の撤去時期が不明確
・隣地との関係に問題がある

といった場合は、購入を慎重に判断する買主もいます。

また、住宅ローンを利用する場合には、金融機関から越境について確認されることも考えられます。

そのため、

「覚書を取れば問題はすべて解決する」ではなく、「現在の越境状態と将来の取り扱いを明確にするための資料」として考える方がよいでしょう。


■覚書が取れない場合は売却できない?

隣地所有者が覚書の締結に協力してくれないケースもあります。

その場合でも、直ちに売却できなくなるとは限りません。

例えば、

・越境の状況
・測量結果
・隣地との協議状況
・覚書を取得できなかった経緯

などを整理し、買主へ説明したうえで売買を検討することがあります。

ただし、越境の程度や内容によっては、買主の利用計画や金融機関の判断に影響する可能性があります。

覚書を取得できないからといって越境そのものを説明しなくてよいわけではありません。

分かっている事実を整理して買主へ伝えることが重要です。


■樹木の枝が越境している場合は少し扱いが違う

隣地の樹木の枝が境界を越えているケースもあります。

現在の民法では、隣地の竹木の枝が境界線を越えている場合、原則として竹木の所有者に枝を切除してもらいます。

ただし、

・竹木の所有者に切除するよう催告したものの、相当期間内に切除されない
・竹木の所有者またはその所在を知ることができない
・急迫の事情がある

といった一定の場合には、越境された土地の所有者が自ら枝を切り取ることができます。

一方、隣地の竹木の根が境界線を越えている場合は、越境された土地の所有者が自ら切り取ることができます。

ただし、実際に枝や根を切ることで樹木が枯れたり、隣地とのトラブルになったりする可能性もあります。

実際に切除する場合は、状況に応じて隣地所有者や専門家へ確認して進める方がよいでしょう。


■給排水管など地下の越境にも注意する

越境というとブロック塀や屋根など、目に見えるものをイメージしやすいと思います。

しかし、不動産売買では地下の配管も確認が必要です。

例えば、

自分の家の排水管
↓
隣地を通っている
↓
道路の下水管へ接続

というケースがあります。

反対に、隣地の給排水管が売却する土地を通っていることもあります。

このような場合は、

・誰の配管なのか
・どこを通っているのか
・使用について承諾があるのか
・修理や交換するときにどうするのか
・将来移設する必要があるのか

などを確認します。

地下埋設物は現地を見ただけでは分からないため、売主が知っている過去の工事内容や資料があれば、不動産会社へ伝えておきましょう。


■越境があることを買主に伝える

売主が越境を把握しているのであれば、不動産会社へその内容を伝えておくことが重要です。

例えば、

・どの部分が越境しているのか
・誰の所有物なのか
・どの程度越境しているのか
・いつ判明したのか
・隣地と協議しているのか
・覚書があるのか
・将来撤去などの取り決めがあるのか

などです。

国土交通省が公開している不動産取引の参考資料でも、境界に関する取り決めや紛争の有無、屋根・ひさし・フェンス・塀・樹木などの越境、隣地からの越境などについて確認する考え方が示されています。

売却後に買主が初めて越境を知るよりも、契約前に状況を整理して説明しておく方がトラブルを防ぎやすくなります。

不動産売買の重要事項説明で買主が確認するポイントはこちらで詳しく解説しています。

■売買契約では越境をどう扱う?

越境が残った状態で売却する場合は、契約内容でも取り扱いを確認します。

例えば、

・越境が存在すること
・買主がその状態を確認して購入すること
・既存の覚書を買主へ引き継ぐこと
・売主が引渡しまでに撤去するもの
・現状のまま引き渡すもの
・将来撤去する場合の取り決め

などです。

物件によって状況が異なるため、すべての越境に同じ特約を使用するのではなく、実際の越境状況に合わせて内容を整理する必要があります。

特に、「売主が撤去する越境物」「買主が現状のまま引き継ぐ越境物」を混同しないことが重要です。

不動産売買契約書に記載される主な内容はこちらで詳しく解説しています。

■越境があると売却価格は下がる?

越境があるからといって、必ず一定額だけ売却価格が下がるわけではありません。

影響の大きさは越境の内容によって異なります。

例えば、

・越境が数センチ程度なのか
・建物そのものが越境しているのか
・簡単に撤去できるものなのか
・建替えに影響するのか
・隣地との覚書があるのか
・隣地とトラブルになっているのか

などによって買主の判断は変わります。

特に将来の建築計画に影響する越境や、解消方法が決まっていない越境については、購入希望者が慎重になる可能性があります。

一方で、越境状況が明確になっており、将来の解消方法について隣地との取り決めができていれば、買主が状況を判断しやすくなります。

そのため、売却価格への影響を考える前に、

「何が、どこからどこへ、どの程度越境しているのか」

を明確にすることが重要です。

不動産の査定価格がどのように決まるのかはこちらで詳しく解説しています。

■越境が見つかったときの売却までの流れ

越境が見つかった場合は、次のような順番で整理すると分かりやすくなります。

① 境界の位置を確認する
↓
② 越境物と所有者を確認する
↓
③ 越境の程度を確認する
↓
④ 撤去・移設できるか検討する
↓
⑤ 必要に応じて隣地所有者と協議する
↓
⑥ 覚書などの取り決めを検討する
↓
⑦ 買主へ越境内容を説明する
↓
⑧ 売買契約で取り扱いを明確にする
↓
⑨ 引渡し・将来の所有者へ引き継ぐ

すべてのケースで覚書が必要になるわけではありません。

まず越境の状況を正確に確認してから、その物件に必要な対応を検討します。


■越境が見つかっても慌てて撤去しない

越境が見つかると、

「売却するためにはすぐ撤去しないといけない」

と思うかもしれません。

しかし、隣地所有者の所有物を売主の判断だけで撤去することはできませんし、自分の建物であっても撤去によって建物へ影響する可能性があります。

また、測量が終わっていなければ、本当に越境しているのか確定していない場合もあります。

そのため、

境界確認 → 越境状況の確認 → 隣地との協議 → 売却方法の検討

という順番で進めることが重要です。

越境があるから売れないと決めつけず、まず現在の状況を整理しましょう。


■よくある質問 Q&A

1. Q. 越境がある土地でも売却できますか?

売却できる場合があります。

越境があるからといって必ず売却前にすべて撤去しなければならないわけではありません。

越境の内容を確認し、必要に応じて隣地との覚書などを取り交わし、買主へ説明したうえで売却する方法があります。

2. Q. 越境覚書は必ず必要ですか?

すべての越境で必ず必要になるわけではありません。

越境物の種類や程度、隣地との関係、撤去できるかどうかなどによって対応は異なります。

3. Q. 隣地が越境を認めてくれない場合はどうすればいいですか?

まず境界や越境の根拠となる測量資料などを確認します。

当事者だけで解決が難しい場合は、土地家屋調査士、弁護士などの専門家へ相談することも検討します。

4. Q. 隣地の木の枝が入ってきたら勝手に切ってもいいですか?

原則として、まず竹木の所有者に切除してもらいます。

ただし、催告しても相当期間内に切除されない場合、所有者や所在が分からない場合、急迫の事情がある場合には、一定の条件のもと越境された土地所有者が自ら枝を切り取ることができます。

5. Q. 越境があると必ず売却価格が下がりますか?

必ず下がるわけではありません。

越境の程度、撤去の難しさ、建築への影響、隣地との取り決めの有無などによって判断されます。


■まとめ

越境がある不動産でも、必ずしも売却できないわけではありません。

重要なのは、越境が見つかったときに、

・境界の位置
・越境物
・越境物の所有者
・越境している方向
・越境の程度
・撤去できるか
・隣地との取り決め
・覚書の有無

などを確認することです。

すぐに撤去できない越境であれば、隣地所有者と協議し、将来の撤去などについて覚書を取り交わしたうえで売却する方法もあります。

また、売主が把握している越境については、不動産会社へ伝え、買主が契約前に状況を確認できるようにしておくことが大切です。

「越境があるから売れない」と考えるのではなく、「越境をどのような状態で買主へ引き継ぐのか」を整理することが、越境のある不動産を売却するときのポイントです。

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