相続した実家や転居後の住宅など、誰も住まなくなった家をそのまま所有している方もいると思います。
「誰も住んでいないから、そのままにしておいても大丈夫」と思うかもしれません。
しかし、空き家は使用していなくても固定資産税等や管理費用がかかり、建物の老朽化も進んでいきます。
さらに管理状態が悪くなると、倒壊や外壁の落下、害虫、庭木の越境などによって近隣へ影響を与える可能性もあります。
空き家を所有していること自体が問題なのではありません。
重要なのは、空き家を適切に管理せず、そのまま放置し続けないことです。
この記事では、空き家を放置するとどうなるのか、維持費や管理上のリスク、売却を検討するときの注意点について分かりやすく解説します。
- ■空き家は誰も住んでいなくても維持費がかかる
- ■空き家を放置すると建物の劣化が進む
- ■空き家の放置で起こる代表的なリスク
- ■空き家の所有者には適切な管理が求められる
- ■「管理不全空家等」とは?
- ■「特定空家等」とは?
- ■空き家を放置すると固定資産税が高くなる?
- ■空き家はどのくらいの頻度で管理すればいい?
- ■遠方の空き家はどう管理する?
- ■空き家を放置すると売却価格にも影響する?
- ■空き家を売却するなら修繕してから売るべき?
- ■空き家に家財や残置物が残っている場合
- ■古い空き家は解体した方がいい?
- ■空き家を売却するか迷ったら維持費を計算する
- ■空き家は「売る・貸す・保有する」を早めに検討する
- ■よくある質問 Q&A
- ■まとめ
■空き家は誰も住んでいなくても維持費がかかる

空き家になったからといって、住宅にかかる費用がすべてなくなるわけではありません。
代表的な費用には、
・固定資産税、都市計画税
・火災保険
・電気、水道などの基本料金
・庭木や雑草の管理費
・建物の修繕費
・遠方の場合の交通費
・空き家管理サービスを利用する場合の費用
などがあります。
例えば年間20万円の維持費がかかっている場合、5年間保有すると合計100万円です。
さらに屋根や外壁、給排水設備などの修繕が必要になれば、別途費用が発生することがあります。
そのため、「使っていない家だから費用はほとんどかからない」とは限りません。
まずは、その空き家を1年間所有するためにどのくらいの費用がかかっているのか確認してみましょう。
■空き家を放置すると建物の劣化が進む
誰も住んでいない住宅でも、建物は少しずつ劣化していきます。
特に長期間確認していない空き家では、
・雨漏り
・屋根や外壁の劣化
・建具の不具合
・給排水設備の不具合
・湿気やカビ
・害虫や害獣
・庭木や雑草の繁茂
などが発生していることがあります。
小さな不具合であれば早めの修繕で済むことでも、長期間気付かず放置すると被害が広がる可能性があります。
例えば屋根の一部から雨水が入っている状態を長期間放置すれば、屋根だけではなく天井や壁、柱などにも影響する可能性があります。
定期的に建物を確認することが重要です。
■空き家の放置で起こる代表的なリスク

空き家の問題は、建物所有者だけの問題とは限りません。
管理状態が悪くなると周辺にも影響する可能性があります。
1. 建物や外壁などが倒壊・落下する

建物の老朽化が進むと、屋根材や外壁などが落下する危険があります。
さらに建物の状態が著しく悪化すれば、倒壊する可能性もあります。
特に道路や隣地との距離が近い住宅では、建物の一部が落下すると通行人や隣地へ影響する可能性があります。
2. 庭木や雑草が隣地へ越境する

空き家では庭の管理が行われなくなり、雑草や庭木が伸び続けることがあります。
枝が隣地へ越境したり道路へ張り出したりすると、近隣住民や通行人へ影響する可能性があります。
落ち葉などが近隣へ飛散することで、トラブルにつながる場合もあります。
3. 害虫や害獣が発生する

管理されていない建物では、害虫や害獣が発生する可能性があります。
建物内部だけの問題ではなく、周辺の住宅へ影響する場合もあります。
4. 不法侵入などの防犯上の問題

窓ガラスが割れたままになっていたり、郵便物が大量にたまっていたりすると、長期間人が住んでいないことが分かりやすくなります。
その結果、不法侵入などの防犯上の問題につながる可能性があります。
5. ごみや悪臭などの問題

敷地内へのごみの放置や不法投棄などによって、景観や衛生上の問題が発生することがあります。
放置されたごみなどから悪臭が発生すれば、近隣にも影響する可能性があります。
■空き家の所有者には適切な管理が求められる
空家等対策の推進に関する特別措置法では、空き家の所有者または管理者は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切な管理に努めることとされています。
そのため、
「自分の土地と建物だから放置していても問題ない」
というわけではありません。
空き家を所有し続けるのであれば、建物や敷地の状態を定期的に確認し、周辺へ悪影響を与えないよう管理することが重要です。
■「管理不全空家等」とは?
空き家を長期間放置したからといって、すぐに「特定空家等」になるわけではありません。
現在の空家法では、適切な管理が行われておらず、そのまま放置すれば将来的に「特定空家等」に該当するおそれがある空き家について、**「管理不全空家等」**として市区町村が対応できる制度があります。
管理不全空家等に該当すると、市区町村から必要な措置について指導を受けることがあります。
さらに指導しても改善されず、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれが大きい場合には、勧告を受ける可能性があります。
つまり、
管理されていない空き家
↓
管理不全空家等
↓
特定空家等
というように状態が悪化する前の段階から、行政が対応できる仕組みになっています。
■「特定空家等」とは?
特定空家等とは、例えば、
・そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれがある
・適切な管理が行われず著しく景観を損なっている
・その他、周辺の生活環境を守るために放置することが不適切である
と認められる状態の空き家です。
特定空家等については、市区町村から助言・指導、勧告、命令などの措置が行われることがあります。
さらに一定の場合には行政代執行などに進む可能性もあります。
そのため、建物の状態が悪くなってから対応するのではなく、早い段階で管理や売却などを検討することが重要です。
■空き家を放置すると固定資産税が高くなる?
「空き家になると固定資産税が6倍になる」
という話を聞いたことがある方もいると思います。
しかし、空き家になっただけで、すぐに固定資産税が6倍になるわけではありません。
住宅が建っている土地には、一定の要件のもと住宅用地特例が適用され、固定資産税の課税標準が軽減されています。
小規模住宅用地の場合、200㎡以下の部分について固定資産税の課税標準が6分の1となります。
一方、管理不全空家等や特定空家等について市区町村から勧告を受けた場合、その敷地は住宅用地特例の対象から外れることがあります。
ここで注意したいのは、
「固定資産税そのものが必ず6倍になる」という意味ではない
ということです。
住宅用地特例によって軽減されていた「課税標準」が元に戻るため、実際の税額が単純に6倍になるとは限りません。
「空き家にしただけで6倍」ではなく、
管理状態が悪化し、管理不全空家等や特定空家等として勧告を受けることが重要なポイント
と覚えておきましょう。
■空き家はどのくらいの頻度で管理すればいい?
空き家の状態や立地によって必要な管理頻度は異なります。
重要なのは、長期間まったく確認しない状態にしないことです。
例えば定期的に、
・室内を換気する
・雨漏りがないか確認する
・屋根や外壁を確認する
・庭木や雑草を確認する
・郵便物を確認する
・窓や玄関の施錠を確認する
・給排水設備を確認する
・害虫や害獣の痕跡がないか確認する
などを行います。
台風や大雨などの後には、建物に被害が発生していないか確認した方がよい場合もあります。
■遠方の空き家はどう管理する?

相続した実家が遠方にある場合は、管理が特に難しくなります。
例えば片道2時間かかる実家を毎月確認するとなれば、時間だけでなく交通費もかかります。
そのような場合は、
・親族に管理をお願いする
・近隣の管理会社へ依頼する
・空き家管理サービスを利用する
などの方法があります。
管理サービスでは会社によって、
・建物外部の確認
・郵便物の確認
・室内換気
・通水
・庭の状態確認
などを行っている場合があります。
サービス内容や料金は会社によって異なるため、利用する場合は確認しましょう。
■空き家を放置すると売却価格にも影響する?
空き家だからという理由だけで、必ず売却価格が下がるわけではありません。
しかし、長期間管理されず建物の状態が悪化すると、売却に影響する可能性があります。
例えば、
・雨漏りが発生している
・床や壁が傷んでいる
・庭木や雑草が大量に生えている
・室内にカビや悪臭がある
・設備が使用できない
・外観の印象が悪くなっている
といった状態です。
購入希望者が建物を利用する場合は、購入後の修繕費用まで考えて購入価格を検討します。
また、古家付き土地として売却する場合でも、庭木や残置物が大量に残っていれば、撤去費用を考慮した価格交渉を受ける可能性があります。
そのため、将来的に売却する可能性が高いのであれば、完全に放置してしまうメリットはあまりありません。
不動産が売れない主な原因と、売却が長期化した場合の見直しポイントはこちらで詳しく解説しています。
■空き家を売却するなら修繕してから売るべき?
建物が傷んでいると、「修理してから売った方が高く売れるのでは?」と考えることがあります。
しかし、必ずしも売却前に修繕した方がよいとは限りません。
例えば100万円かけて修繕しても、売却価格が100万円以上高くなるとは限らないからです。
古い住宅では、
・現状のまま中古戸建として売却する
・古家付き土地として売却する
・解体して更地で売却する
・不動産会社へ現状のまま買い取ってもらう
など複数の売却方法があります。
そのため、大きな修繕費用をかける前に、現在の状態で一度査定を受けることをおすすめします。
仲介と不動産買取の違いや、それぞれのメリット・デメリットはこちらで詳しく解説しています。
■空き家に家財や残置物が残っている場合

相続した実家などでは、家具や家電、衣類などが残ったまま空き家になっていることがあります。
この場合でも、すべて片付けてからでなければ不動産会社へ相談できないわけではありません。
まず現在の状態で査定を受けることができます。
売却方法によっては、
・売主が家財を撤去する
・売買契約後に撤去する
・残置物を残した状態で不動産会社へ買い取ってもらう
などの方法があります。
片付けに大きな費用がかかりそうな場合は、先に売却方法を確認してから処分を進める方法もあります。
相続した家に家財や残置物が残っている場合の片付けと売却方法はこちらで詳しく解説しています。
■古い空き家は解体した方がいい?

建物が古いからといって、すぐに解体する必要があるとは限りません。
建物を利用したい購入者がいる可能性もありますし、古家付き土地としてそのまま売却できる場合もあります。
一方で、建物の状態が著しく悪い場合や、土地としての需要が高い場合などは、解体して更地で売却する方法が適していることもあります。
ただし、解体する場合には費用がかかります。
また、建物を解体すると土地の固定資産税等に関係する住宅用地特例が適用されなくなる可能性があるため、売却時期も含めて検討する必要があります。
先に解体するのではなく、
① 古家付きで売却した場合
② 更地にして売却した場合
③ 現状のまま買取してもらった場合
の価格と費用を比較してから判断するとよいでしょう。
古い家をそのまま売る場合と、解体して更地で売る場合の違いはこちらで詳しく解説しています。
■空き家を売却するか迷ったら維持費を計算する
空き家を売却するか保有するか迷っている場合は、まず年間の維持費を計算してみましょう。
例えば、
固定資産税等 10万円
保険料 3万円
庭の管理 5万円
交通費 4万円
その他 3万円
年間維持費 25万円
だったとします。
この状態で5年間保有すると、
25万円 × 5年間 = 125万円
です。
さらに建物の修繕が必要になれば費用は増えます。
もちろん、将来自分や家族が利用する予定があるのであれば、維持費を払って保有する意味があります。
一方、
「誰も使う予定がない」
「賃貸する予定もない」
「何となく残している」
という状態であれば、年間の維持費と売却した場合の価格を比較してみることが重要です。
■空き家は「売る・貸す・保有する」を早めに検討する
空き家になったからといって、すぐに売却しなければならないわけではありません。
将来自分で利用するのであれば、適切に管理しながら保有する方法があります。
賃貸需要がある地域であれば、貸すことも選択肢です。
今後利用する予定がなければ、売却する方法もあります。
重要なのは、
「まだ決めていないから何もしない」
という状態を長期間続けないことです。
売却、賃貸、保有のどれを選ぶとしても、まず現在の建物の状態と維持費を確認しておきましょう。
相続した実家を売却・賃貸・保有する場合のメリットと注意点はこちらで詳しく解説しています。
■よくある質問 Q&A

1. Q. 空き家にしただけで固定資産税が6倍になりますか?
空き家になっただけで、直ちに固定資産税が6倍になるわけではありません。
管理不全空家等や特定空家等として市区町村から勧告を受けると、敷地に対する住宅用地特例が適用されなくなる場合があります。
また「6倍」という表現は課税標準の軽減割合から使われることがありますが、実際の税額が必ず6倍になるという意味ではありません。
2. Q. 空き家はどのくらい放置すると特定空家等になりますか?
「何年間放置すると特定空家等になる」という一律の期間が決められているわけではありません。
建物の状態や衛生面、景観、周辺の生活環境への影響などによって判断されます。
3. Q. 遠方にある実家を自分で管理できない場合はどうすればいいですか?
親族などに管理をお願いする方法のほか、空き家管理サービスを利用する方法があります。
長期間まったく確認しない状態にしないことが重要です。
4. Q. 空き家は修繕してから売った方が高く売れますか?
必ずしもそうとは限りません。
修繕費以上に売却価格が上がるとは限らないため、大きな費用をかける前に現在の状態で査定を受けてみましょう。
5. Q. 家具や荷物が残った空き家でも売却できますか?
売却の相談や査定はできます。
仲介では引渡しまでに撤去することが一般的ですが、不動産会社による買取では残置物を残した状態で売却できる場合もあります。
■まとめ
空き家は誰も住んでいなくても、固定資産税等や保険料、管理費、修繕費などがかかります。
さらに適切に管理されない状態が続けば、
・建物の老朽化
・倒壊や外壁落下
・庭木の越境
・害虫や害獣
・不法侵入
・悪臭やごみ
・近隣トラブル
などにつながる可能性があります。
また、管理不全空家等や特定空家等として市区町村から勧告を受けると、土地の固定資産税等に適用されていた住宅用地特例の対象から外れる場合があります。
空き家を所有していること自体が問題なのではありません。
大切なのは、利用予定がないまま管理せずに放置し続けないことです。
今後利用する予定があるなら適切に管理する、賃貸できるなら活用を検討する、利用予定がなければ売却を検討するなど、早めに今後の方針を決めておきましょう。



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