不動産を売却するとき、前面道路を調べると「私道」になっていることがあります。
私道と聞くと、
「私道に接している土地でも売却できる?」
「私道持分がないと売れない?」
「通行や水道工事をするときは承諾が必要?」
と心配になる方も多いと思います。
結論からいうと、私道に接しているからといって、不動産を売却できないわけではありません。
ただし、私道に接する土地では、公道に接する土地とは別に確認しておきたいポイントがあります。
特に重要なのが、
・建築基準法上の道路種別
・私道の所有者
・私道持分の有無
・通行に関する権利や取り決め
・給排水管などの埋設状況
・私道を掘削するときの権利関係
・私道の維持管理や費用負担
です。
この記事では、私道に接する土地を売却するときに、売主が確認しておきたいポイントを分かりやすく解説します。
- ■そもそも私道とは?
- ■「私道」と「建築基準法上の道路」は別に確認する
- ■私道持分とは?
- ■私道持分がある場合は売却時に確認する
- ■私道持分がないと売却できない?
- ■私道の「通行」は何を確認する?
- ■現在通行できているだけで判断しない
- ■私道では「掘削」についても確認する
- ■掘削承諾書があるか確認する
- ■掘削承諾書がないと工事できない?
- ■共有私道は必ず全員の承諾が必要?
- ■私道が複数の土地に分かれている場合もある
- ■位置指定道路でも個人所有の場合がある
- ■私道所有者と連絡が取れない場合は?
- ■私道の維持管理費用も確認する
- ■私道持分がないと住宅ローンに影響する?
- ■私道持分も売買対象にする場合は忘れずに確認する
- ■重要事項説明では私道についても確認する
- ■私道に接する土地を売却するときの調査手順
- ■私道だから売れないと判断しない
- ■よくある質問 Q&A
- ■まとめ
■そもそも私道とは?
道路には、国や地方公共団体が所有・管理する道路だけでなく、個人や法人などが所有している道路もあります。
一般的に、個人や法人などが所有している道路を「私道」と呼びます。
住宅地では、例えば公道から住宅までの間に私道があり、その道路を複数の住宅で利用していることがあります。
私道の所有方法もさまざまです。
・一人が道路全体を所有している
・複数人で道路全体を共有している
・道路が複数の土地に分かれ、それぞれ別の人が所有している
などがあります。
そのため、「前面道路が私道だった」というだけでは、詳しい権利関係までは分かりません。
まずは、私道となっている土地の所有者や持分を確認することが重要です。
■「私道」と「建築基準法上の道路」は別に確認する
私道を調べるときに重要なのが、
「誰が所有している道路なのか」と「建築基準法上どのような道路なのか」は別の問題
ということです。
例えば、個人が所有している私道でも、建築基準法上の道路として認められている場合があります。
代表的なものが、建築基準法第42条第1項第5号の「位置指定道路」です。
つまり、
個人が所有している私道
↓
建築基準法上は位置指定道路
というケースがあります。
反対に、現地では道路のように見えていても、建築基準法上の道路に該当しない場合もあります。
そのため、
「私道だから建築できない」
とも、
「道路の形をしているから建築できる」
とも一概には判断できません。
土地を売却するときは、私道の所有者だけでなく、建築基準法上の道路種別についても確認しておきましょう。
■私道持分とは?
私道持分とは、私道となっている土地について所有権の全部または一部を持っている状態です。
例えば、一つの私道を4人で共有している場合、
Aさん 4分の1
Bさん 4分の1
Cさん 4分の1
Dさん 4分の1
というように、それぞれが持分を所有していることがあります。
一方で、一つの道路として利用されていても、登記上は道路が複数の土地に分かれ、それぞれ別の所有者が所有していることもあります。
そのため私道を調査するときは、公図や登記事項証明書などを確認して、
・私道が何筆に分かれているのか
・それぞれ誰が所有しているのか
・共有の場合は持分割合がどうなっているのか
を確認します。
■私道持分がある場合は売却時に確認する
売却する宅地とは別に、前面私道の持分を所有していることがあります。
例えば、
宅地100㎡
とは別に、
私道100㎡のうち持分4分の1
を所有しているようなケースです。
この場合は、宅地の売却に伴って私道持分も買主へ移転することがあります。
そのため売却前に、
・どの私道を所有しているのか
・持分割合はいくらか
・登記名義は売主になっているか
・宅地と一緒に売買対象とするのか
を確認します。
昔購入した住宅では、所有者自身が私道持分を持っていることを意識していない場合もあります。
宅地だけでなく、前面道路についても登記事項証明書を確認しておきましょう。
■私道持分がないと売却できない?
私道持分がないからといって、直ちに不動産を売却できないわけではありません。
ただし、持分がない場合は、
「その私道をどのような根拠で利用しているのか」
を確認することが重要です。
例えば、
・通行について承諾書や覚書がある
・通行に関する権利が設定されている
・過去の売買契約書などに私道利用について記載がある
・その他、私道を利用する権利関係がある
など、物件によって状況は異なります。
ここで注意したいのは、
「私道持分がない=通行できない」
と単純に判断しないことです。
一方で、
「これまで問題なく通行していたから、これからも問題ない」
とも限りません。
売却するときは、現在の利用状況だけでなく、買主が購入後にどのような根拠で私道を利用できるのか確認しておくことが重要です。
■私道の「通行」は何を確認する?
私道に接する土地では、実際にどのような通行が行われているのか確認します。
例えば、
・徒歩
・自転車
・自動車
・宅配業者などの車両
です。
さらに、
・通行承諾書があるか
・覚書があるか
・通行に関する登記された権利があるか
・通行料などの負担があるか
・過去に通行についてトラブルがなかったか
なども確認します。
特に駐車場のある住宅では、自動車での通行についても確認しておいた方がよいでしょう。
徒歩で通行できることと、自動車で自由に通行できることが必ずしも同じとは限らないためです。
■現在通行できているだけで判断しない
売主が何十年も私道を利用していると、
「今まで普通に通っていたから問題ない」
と思うかもしれません。
しかし、不動産を売却すると所有者が変わります。
例えば、売主と私道所有者が親族や昔からの知人で、これまで特に取り決めをせずに通行していたケースも考えられます。
そのため売却するときは、
「現在通行できているか」
だけでなく、
「買主が購入後もどのような根拠で利用できるのか」
という視点で確認することが重要です。
過去に通行承諾書や覚書などを取り交わしている場合は、その内容も確認しておきましょう。
■私道では「掘削」についても確認する
私道に接する土地では、通行だけでなく掘削についても確認する必要があります。
住宅を利用するためには、
・上水道
・下水道
・ガス
・電気
などのライフラインが必要です。
例えば、私道内に水道本管があり、そこから宅地へ給水管を引き込む場合、私道を掘削する工事が必要になることがあります。
すでに給排水管が引き込まれていても、
・配管の老朽化
・漏水
・給水管の口径変更
・建替え
・排水管のやり替え
などによって、将来再び私道を掘削する可能性があります。
そのため、
「現在水道が使えているから問題ない」
だけではなく、将来工事が必要になった場合についても確認しておくことが重要です。
■掘削承諾書があるか確認する
過去に私道を掘削して給排水管などを設置している場合、私道所有者との間で承諾書や覚書が作成されていることがあります。
書類が残っている場合は、
・誰と誰が取り交わしたものか
・対象となる土地はどこか
・どのような工事を認めているのか
・将来の所有者にも引き継げる内容なのか
・工事後の道路復旧について記載があるか
・費用負担について記載があるか
などを確認します。
単に、
「掘削承諾書があります」だけではなく、承諾書の内容まで確認することが重要です。
■掘削承諾書がないと工事できない?
ここは私道で特に誤解されやすいところです。
「私道を掘削するなら、必ず私道所有者全員から承諾書をもらわなければならない」
と一律に判断できるわけではありません。
私道の所有形態、工事内容、既存設備の状況、共有物に対する行為の内容、ライフラインを設置・使用するための権利関係などによって判断が異なるためです。
現在の民法では、他の土地に設備を設置しなければ電気、ガス、水道水などの継続的な給付を受けることができない場合などについて、一定の要件のもと他の土地に設備を設置したり、他人が所有する設備を使用したりできる規定も設けられています。
そのため、
「承諾書がない=工事できない」
と判断するのではなく、実際の土地や道路の権利関係を確認する必要があります。
■共有私道は必ず全員の承諾が必要?
一つの私道を複数人で共有していることがあります。
この場合、
「道路を工事するなら共有者全員の承諾が必要では?」
と思うかもしれません。
しかし、共有物に対する行為は、その工事内容によって必要となる共有者の同意が異なる場合があります。
例えば、現在の民法では、
・保存行為
・管理行為
・軽微な変更
・それ以外の変更
などによって取り扱いが異なります。
保存行為については各共有者が単独で行うことができ、管理や軽微な変更については持分価格の過半数、それ以外の変更については原則として共有者全員の同意が必要とされています。
したがって、
「共有私道の工事=必ず全員の承諾が必要」
とは限りません。
実際にどの範囲の同意が必要になるかは、私道の所有形態や工事内容などを確認して判断する必要があります。
■私道が複数の土地に分かれている場合もある
私道は、一つの土地を複数人で共有しているとは限りません。
例えば一つの道路として利用されていても、
道路① Aさん所有
道路② Bさん所有
道路③ Cさん所有
道路④ 市所有
道路⑤ Dさん所有
というように、複数の土地に分かれていることがあります。
この場合は、
「私道持分を持っているかどうか」
だけでは判断できません。
自宅から公道まで出るために、実際にどの土地を通行しているのか確認する必要があります。
また、給排水管の工事をする場合も、どの土地を掘削するのかによって関係する所有者が変わる可能性があります。
公図と登記事項証明書を照らし合わせながら確認することが重要です。
土地の境界や境界確定測量についてはこちらで詳しく解説しています。
■位置指定道路でも個人所有の場合がある

位置指定道路とは、特定行政庁から道路位置の指定を受けた建築基準法上の道路です。
ここで注意したいのが、「位置指定道路=公道」ではないということです。
位置指定道路でも、土地そのものは個人や法人が所有している場合があります。
つまり、
▼建築基準法上の道路
種別→ 位置指定道路
▼所有関係
→ 個人所有の私道
というケースがあります。
この場合、建築基準法上の接道だけではなく、私道の所有関係、通行、給排水管などの状況も確認します。
■私道所有者と連絡が取れない場合は?
私道を調査すると、
・登記名義人が亡くなっている
・相続登記が行われていない
・登記上の住所から転居している
・共有者の一部と連絡が取れない
といったケースもあります。
このような場合でも、
「所有者の一人と連絡が取れない=土地を売却できない」
と直ちに判断する必要はありません。
現在は共有制度や所有者不明土地に関する制度も見直されています。
また、実際に何をしようとしているのかによって必要な対応も異なります。
例えば、
・単に現在の道路を通行する
・既存配管を修理する
・新しい配管を設置する
・道路そのものを変更する
では、問題となる権利関係が同じとは限りません。
売却する土地で所有者不明などの問題が見つかった場合は、不動産会社だけで判断せず、必要に応じて司法書士、土地家屋調査士、弁護士、行政、ライフライン事業者などへ確認します。
■私道の維持管理費用も確認する
私道では、道路の所有者や利用者で維持管理費用を負担している場合があります。
例えば、
・道路の舗装
・道路の補修
・側溝の修理
・排水設備の修理
・清掃
などです。
私道所有者や利用者の間で管理方法や費用負担について取り決めがある場合は、その内容を確認します。
また、過去に道路補修費などを負担したことがある場合は、資料が残っていないか確認しておきましょう。
買主が購入したあとに初めて費用負担を知ることがないよう、売主が把握している内容は不動産会社へ伝えておくことが重要です。
■私道持分がないと住宅ローンに影響する?
私道持分がない不動産では、住宅ローンを利用する際に金融機関から私道について確認されることがあります。
例えば、
・建築基準法上の道路種別
・接道状況
・私道の所有者
・私道持分の有無
・通行に関する権利
・給排水管の状況
・掘削に関する権利関係
・再建築できるか
などです。
ただし、
「私道持分がない=住宅ローンを利用できない」
と一律に決まっているわけではありません。
金融機関によって審査基準は異なり、物件の状況によっても判断が変わります。
売却する側としては、買主が住宅ローンを申し込んだあとに問題が分かるよりも、売却前に私道関係の資料を整理しておいた方がスムーズです。
再建築不可物件になる主な原因や、売却するときに確認するポイントはこちらで詳しく解説しています。
■私道持分も売買対象にする場合は忘れずに確認する
売主が宅地とは別に私道持分を所有している場合は、売買対象から漏れないように注意します。
例えば、
宅地 100㎡
私道 100㎡のうち持分4分の1
というケースです。
この場合は売買契約書や登記手続きでも、
・宅地の地番
・私道の地番
・私道の持分割合
を確認します。
過去の売買で、宅地は現在の所有者へ移転されているのに、私道持分だけ以前の所有者名義のまま残っているケースも考えられます。
売却前に宅地だけでなく、私道についても登記名義を確認しておきましょう。
■重要事項説明では私道についても確認する
私道に接する土地を売買するときは、重要事項説明でも私道に関する内容を確認します。
例えば物件に応じて、
・私道の面積
・私道持分
・私道に関する負担
・道路の状況
・給排水などのライフライン
・設備整備に伴う負担
などが確認されます。
また、通行や掘削について承諾書、覚書などがある場合は、その内容も重要です。
売主が過去の売買契約書や私道関係の承諾書などを保管している場合は、査定や売却を依頼するときに不動産会社へ渡しておきましょう。
不動産売買の重要事項説明で買主が確認するポイントはこちらで詳しく解説しています。
■私道に接する土地を売却するときの調査手順
私道に接する土地では、次のような順番で確認すると整理しやすくなります。
① 前面道路の建築基準法上の道路種別を確認する
↓
② 公図や登記事項証明書で私道の所有者を確認する
↓
③ 私道持分の有無を確認する
↓
④ 実際の通行状況と通行に関する権利を確認する
↓
⑤ 給排水管などの埋設状況を確認する
↓
⑥ 掘削に関する権利や承諾書を確認する
↓
⑦ 私道の管理方法や費用負担を確認する
↓
⑧ 売買対象となる私道持分を確認する
↓
⑨ 買主へ説明して売買契約へ進む
私道の調査で特に重要なのは、
「道路種別」「所有関係」「通行」「掘削」を別々に確認することです。
例えば、位置指定道路だからといって通行や掘削の権利関係まで確認できたことにはなりません。
反対に、私道持分がないというだけで、再建築できないと判断することもできません。
それぞれを分けて調査することが重要です。
2項道路やセットバックが必要になる土地を売却するときの注意点はこちらで詳しく解説しています。
■私道だから売れないと判断しない
私道に接しているからといって、それだけで売却できないわけではありません。
重要なのは、
・建築基準法上どのような道路なのか
・誰が所有しているのか
・私道持分があるのか
・どのような根拠で通行しているのか
・給排水などのライフラインに問題がないか
・将来工事するときの権利関係はどうなっているのか
を確認することです。
私道関係が整理されていれば、買主も購入後に土地をどのように利用できるのか判断しやすくなります。
反対に、
「今まで問題なく使っていたから大丈夫」
と調査せずに売却を進めると、売買契約の直前や住宅ローン審査、建替えの検討時などに問題が判明する可能性があります。
売却前に私道関係の資料を整理し、不明な点があれば確認しておきましょう。
■よくある質問 Q&A

1. Q. 私道に接している土地でも売却できますか?
売却できます。
ただし、建築基準法上の道路種別、私道の所有者、持分、通行、掘削、給排水などの状況を確認しておくことが重要です。
2. Q. 私道持分がなくても売却できますか?
私道持分がないからといって、直ちに売却できないわけではありません。
ただし、買主が購入後にどのような根拠で私道を通行・利用できるのか確認しておく必要があります。
3. Q. 私道を掘削するには所有者全員の承諾が必要ですか?
必ず全員の承諾が必要とは限りません。
私道の所有形態、工事内容、共有物に対する行為の内容、ライフライン設置に関する権利などによって判断が異なります。
実際に工事を行う場合は個別に確認が必要です。
4. Q. 位置指定道路なら公道ですか?
位置指定道路でも私道の場合があります。
「位置指定道路」は建築基準法上の道路種別で、「公道・私道」は道路の所有関係についての区分なので、分けて考える必要があります。
5. Q. 私道持分がないと再建築できませんか?
私道持分がないという理由だけで、再建築できないとは判断できません。
再建築できるかどうかは、建築基準法上の道路種別や接道状況などを確認する必要があります。
私道持分については、それとは別に通行や掘削などの権利関係を確認します。
■まとめ
私道に接する土地でも売却することはできます。
ただし、私道については、
・建築基準法上の道路種別
・所有者
・私道持分
・通行
・掘削
・給排水などのライフライン
・管理や費用負担
を確認することが重要です。
特に、
「私道持分がない=通行できない」
「位置指定道路=公道」
「共有私道の工事=必ず全員の承諾が必要」
と単純に判断しないようにしましょう。
私道に接する土地を売却するときは、
「道路種別」「所有関係」「通行」「掘削」の4つを分けて確認する
ことがポイントです。
公図、登記事項証明書、道路関係資料、過去の通行・掘削承諾書などを確認し、買主が購入後も土地を利用できるのかという視点で整理してから売却を進めましょう。



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