不動産の売買契約では、買主から売主へ「手付金」を支払うことが一般的です。
例えば3,000万円の不動産を購入するときに、契約時に100万円を手付金として支払い、残りの2,900万円を決済・引渡し日に支払う、といった形です。
しかし、手付金には単に「売買代金の一部を先に支払う」という意味だけではありません。
契約後に売主または買主の事情で契約をやめたい場合の「手付解除」にも関係してきます。
今回は、不動産売買における手付金と手付解除について分かりやすく説明します。
① 手付金とは?

手付金とは、
一般的に不動産の売買契約を締結するときに、「買主から売主へ支払うお金」です。
売買契約時に手付金を支払い、決済時には売買代金からすでに支払った手付金を差し引いた残代金を支払います。
代金の一部を、売買契約を行う信頼の証としてお渡しするというイメージです。
例えば、
売買価格 3,000万円
手付金 100万円
残代金 2,900万円
という契約であれば、
契約時:100万円
決済時(引き渡し):2,900万円
という流れになります。
そのため、最終的には手付金も売買代金の一部に充当されるのが一般的です。
売買契約書の内容については「不動産売買契約書とは?」で詳しく解説しています。
② 「手付金」はいくらくらい?
手付金の金額について「必ず売買価格の○%」という決まりがあるわけではありません。
実際の不動産取引では、売買価格の5%~10%程度を目安として設定することもありますが、売買価格や売主・買主の事情などによって異なります。
例えば3,000万円の物件だからといって、必ず150万円や300万円を支払わなければならないわけではありません。(売主が宅建業者や建築会社の場合は、10%は必ず必要とおっしゃられる場合があります)
売主と買主で協議して手付金額を決めます。
ただし、手付金額は次に説明する「手付解除」にも関係しますので、単純に多ければよい、少なければよいというものでもありません。
③ 手付金は売買代金とは別のお金?
「手付金100万円」と聞くと、
「3,000万円とは別に100万円必要なの?」
と思われる方もいらっしゃいます。(結構多いです!)
一般的な売買契約では、手付金は最終的に売買代金の一部に充当されます。
「3,000万円の物件」で「100万円の手付金」を支払った場合、
3,000万円+100万円=3,100万円
を支払うわけではありません。
契約時に100万円を支払い、決済時に残りの2,900万円を支払うという考え方です。
ただし、仲介手数料や登記費用、住宅ローン関係費用、固定資産税等の清算金などは、売買代金とは別に必要になります。
「頭金」「手付金」を混同されている方も多いです!
④ 手付解除とは?

売買契約を締結したあと、
「やっぱり売るのをやめたい」「やっぱり購入するのをやめたい」
となることもあります。
一定の条件のもとで、相手方の合意を得なくても手付を利用して契約を解除できる仕組みが
「手付解除」です。
一般的な解約手付の場合、
「買主から」解除する場合
→ 支払った手付金を放棄する
「売主から」解除する場合
→ 受け取った手付金の倍額を現実に提供することで契約を解除します。
例えば手付金100万円の場合、
「買主から」手付解除
→ 支払った100万円を放棄
「売主から」手付解除
→ 200万円を現実に提供して解除
という考え方になります。
⑤ 買主から手付解除する場合
買主が自己都合で手付解除をする場合は、すでに支払った手付金を放棄して契約を解除します。
例えば100万円の手付金を支払っていれば、その100万円は原則として返還されません。
その代わり、手付解除が認められる段階であれば、契約を解除するために売買代金全額を支払う必要はありません。
「とりあえず契約して、気が変わったら手付金を返してもらえばいい」
というものではありませんので、契約前に十分検討しましょう。
⑥ 売主から手付解除する場合
「売主から手付解除をする場合」は、
受け取った手付金の倍額を現実に提供して契約を解除することになります。
例えば買主から100万円の手付金を受け取っている場合、
200万円を現実に提供して解除するということです。(ここが大事なポイントです!手付解除期限の日までに200万円を買主に渡さないといけません)
この200万円のうち100万円は買主から受け取った手付金の返還ですので、売主が実質的に負担する金額は追加の100万円という考え方になります。
「200万円とは別に手付金100万円も返す」という意味ではありません。
⑦ 「手付解除期日」に注意
ここは売買契約書で必ず確認していただきたいところです。
契約書で、
「○年○月○日までは手付解除ができる」
など、手付解除ができる期限を定めている場合があります。
手付金を払ったからといって、いつまでも手付解除ができるわけではありません。
契約するときには、「手付解除はいつまでできるのか?」を確認しておきましょう。
⑧ 「履行の着手」とは?
手付解除について調べると「履行の着手」という言葉を目にすることがあります。
民法上、相手方が契約の履行に着手した後は、原則として手付による解除ができなくなります。
ただし、
「具体的に何をしたら履行の着手になるのか?」
は、取引の状況によって判断が異なる場合があります。
そのため、
「まだ手付金を放棄すれば解除できるだろう」
と自分だけで判断するのは避けた方がよいでしょう。
契約を解除したい場合は、できるだけ早く不動産会社へ相談してください。
⑨ 「手付解除」と「違約解除」は違います
ここは混同しやすいところです。
「手付解除」は、
「契約違反がなくても、一定の条件のもとで手付を利用して契約を解除する仕組み」です。
「違約解除」は、
「売主または買主が契約上の義務を履行しないなど、契約違反があった場合」に問題となります。
契約書には違約金について、
「売買代金の○%」などと定められていることがあります。
つまり、手付金100万円だから、どんな理由で契約が解除されても100万円だけ負担すればよいというわけではありません。
どのような理由で解除するのかによって、適用される契約条項が変わります。
⑩ 「住宅ローン特約による解除」とも違います
住宅ローンを利用して不動産を購入する場合には、「融資利用の特約(住宅ローン特約)」を設けることがあります。
「一定の条件を満たしたうえで住宅ローンの承認が得られなかった場合」、
住宅ローン特約に基づいて契約を解除できる場合があります。
これは買主が自己都合で手付金を放棄して解除する「手付解除」とは別の仕組みです。
住宅ローンの仮審査から売買契約、決済・引渡しまでの全体像については「不動産売買の流れ」で解説しています。
よくある質問 Q&A
Q. 手付金は必ず必要ですか?

法律上、すべての不動産売買で必ず手付金を支払わなければならないわけではありません。
ただし、一般的な不動産売買では、契約時に手付金を設定するケースが多くあります。
Q. 手付金を払えば必ず契約を解除できますか?
いつでも解除できるわけではありません。
契約で定めた「手付解除期日」や、「相手方が履行に着手しているか」などによって、手付解除ができない場合があります。
契約書の内容又は不動産会社にご相談をしてください。
Q. 買主が住宅ローンに落ちた場合も手付金を放棄しますか?
必ずしもそうではありません。
「融資利用の特約」があり、その条件を満たしている場合には、住宅ローン特約による解除ができ、手付金が返還される場合があります。また住宅ローン特約については、別の記事で詳しく説明します。
Q. 売主が手付解除する場合、手付金100万円なら300万円必要ですか?
一般的な解約手付であれば、手付金100万円に対して倍額の200万円を現実に提供するという考え方です。
受け取った100万円を返したうえで、さらに200万円を支払うという意味ではありません。
「手付金100万円を返還」+「同条件の100万円」を手付解除期限内に「売主が買主に」支払うことで、手付解除が可能となります。



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