「履行に着手」とは?手付解除できなくなるタイミングを解説

契約

不動産売買契約では、

「相手方が契約の履行に着手するまでは手付解除できる」

という言葉が出てくることがあります。

しかし、

「履行に着手って何?」
「住宅ローンを申し込んだら履行の着手?」
「引越し準備を始めたら手付解除できない?」
「売主が何をしたら解除できなくなる?」

と分かりにくい方も多いでしょう。

結論からいうと、「履行に着手したかどうか」は、単に契約後に何か準備をしただけで決まるものではありません。

契約内容や当事者が実際に行った行為などから判断されるため、「この行為をしたら必ず履行の着手」と一律に判断できない場合があります。

この記事では、不動産売買における「履行に着手」とは何なのか、手付解除との関係を解説します。


■「履行に着手」とは?

不動産売買では、買主から売主へ支払った手付金が「解約手付」とされることがあります。

解約手付の場合、原則として、

【買主から解除】
支払った手付金を放棄して解除


【売主から解除】
受領した手付金の倍額を
現実に提供して解除

することができます。

ただし、民法では相手方が契約の履行に着手した後は、この方法による手付解除ができないとされています。

つまり、

売買契約
 ↓
手付金を支払う(買主が売主に支払う)
 ↓
相手方が履行に着手
 ↓
原則として手付解除できない

という関係です。

「手付金とは?手付解除の仕組みと注意点をわかりやすく解説」についてはこちらで詳しく解説しています。

■何をしたら「履行に着手」になる?

ここが最も分かりにくいところです。

履行の着手は、契約後に何らかの行動をしただけで必ず認められるものではありません。

一般的には、契約を実際に履行するための行為に着手し、外部から見ても履行する意思が明確に分かるような行為が行われたかなどから判断されます。

例えば、

・「買主」が中間金を支払った

・「買主」が残代金を提供した

・「売主」が所有権移転登記の手続きを進めた

・「売主」が契約上必要となる土地の分筆などを行った

といった行為では、履行の着手に該当するかが問題になることがあります。

ただし、行為の内容だけで機械的に判断できるわけではありません。

実際の契約内容や、その行為を行った目的なども含めて判断する必要があります。


■契約の準備をしただけでも履行の着手になる?

契約後に準備を始めたからといって、直ちに履行の着手になるとは限りません。

例えば、

・引越し業者へ見積りを依頼した
・家具を購入した
・住宅ローンの手続きを進めた
・売却後の引越し先を探した

などです。

これらは売買契約に関連して行われることがありますが、それだけで必ず相手方に対する契約の履行に着手したと判断されるわけではありません。

「契約後にお金を使ったから履行の着手」という単純な考え方ではない点に注意しましょう。


■自分が履行に着手したら手付解除できなくなる?

ここは特に間違えやすいところです。

民法上の手付解除では、基準となるのは「相手方」が履行に着手したかどうかです。

例えば買主が手付解除したい場合は、

買主自身が何をしたか

だけではなく、

売主がすでに履行に着手しているか

が重要になります。

反対に、「売主から手付解除する場合」には、買主側の履行の着手が問題になります。

そのため、

「自分が準備を始めたから、もう自分から手付解除できない」

と単純に判断するものではありません。


■契約書に「手付解除期日」がある場合は?

実際の不動産売買契約では、

手付解除期日 10月15日

など、具体的な期限を定めることがあります。

その場合は、「履行の着手」だけではなく、売買契約書に定められた手付解除期日も確認する必要があります。

「履行の着手」と「手付解除期日」は別の問題

です。

手付解除の期限については、こちらの記事で詳しく解説しています。

手付解除の期限はいつまで?契約書の「手付解除期日」を解説


■履行の着手か判断できない場合はどうする?

「この行為は履行の着手になるのか?」については、判断が難しいケースがあります。

特に、

・手付金の金額が大きい
・売主と買主で意見が異なる
・すでに決済準備が進んでいる
・手付解除期日が近い
・相手方が履行に着手したと主張している

といった場合は注意が必要です。

手付解除を考えているのであれば、自己判断で進めず、売買契約書と実際に行われた行為を確認したうえで判断することが重要です。


■よくある質問 Q&A

1. Q. 住宅ローンの本審査を申し込んだら履行の着手ですか?

住宅ローンの手続きを進めたという事実だけで、必ず履行の着手になるとは限りません。

契約内容や実際に行われた行為を含めて判断する必要があります。

2. Q. 引越しの準備を始めたら手付解除できませんか?

引越しの準備をしただけで、直ちに履行の着手になるとは限りません。

家具の購入や引越し業者への依頼なども、それだけで一律に判断することはできません。

3. Q. 中間金を支払った場合はどうですか?

中間金の支払いは、履行の着手に該当するかを判断するうえで重要な行為の一つです。

ただし、実際の契約内容や支払いの性質なども確認する必要があります。

4. Q. 履行の着手後は絶対に契約解除できませんか?

履行の着手によって制限されるのは、ここで説明している手付放棄・手付倍返しによる解除です。

住宅ローン特約や契約違反など、別の解除理由についてはそれぞれの条件で判断します。


■まとめ

「履行に着手」とは、単に売買契約後の準備を始めたというだけで判断されるものではありません。

重要なのは、

・どのような契約内容だったか
・相手方が何を行ったのか
・その行為が契約の履行としてどのような意味を持つのか

です。

また、手付解除では自分ではなく「相手方」が履行に着手したかどうかが重要なポイントになります。

履行の着手に該当するかは個別の事情によって判断が分かれることがあるため、手付解除を行う場合は、契約書と実際の状況を確認して判断しましょう。

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