購入申込書(買付証明書)に法的拘束力はある?キャンセルできる?

契約

気に入った不動産が見つかると、不動産会社から「購入申込書」や「買付証明書」の提出を求められることがあります。

そのとき、

「提出したら必ず購入しないといけない?」
「売主が承諾した後でもキャンセルできる?」
「キャンセルしたら違約金がかかる?」
「売買契約書にサインする前なら大丈夫?」

と不安になる方もいるでしょう。

結論からいうと、一般的な不動産取引では、購入申込書(買付証明書)を提出しただけで、直ちに売買契約が成立するとは通常考えられていません。

購入申込書」は、買主が売主に対して「この条件で購入したい」という意思を伝えるために使用される書面です。

そのため、一般的な不動産取引では、購入申込書(買付証明書)の提出後であっても、正式な売買契約を締結する前であれば、購入を取りやめることができるケースが一般的です。

ただし、購入申込書の記載内容や売主の承諾状況、当事者間でどこまで条件が合意されていたかなどによっては、単純に「契約書へ署名・押印する前だから自由に撤回できる」とは判断できない場合があります。

ただし、

「購入申込書には絶対に法的拘束力がない」と一律に考えるのも適切ではありません。

書面の内容、売主・買主のやり取り、合意の程度、その後の手続などによっては、単なる申込みの撤回だけでは済まない問題が生じる可能性があります。

この記事では、購入申込書(買付証明書)の法的拘束力と、提出後にキャンセルできるのかについて解説します。


■購入申込書(買付証明書)とは?

購入申込書」とは、不動産の購入希望者が売主に対して、購入したい意思や希望条件を伝えるための書面です。

買付証明書」「買付申込書」などと呼ばれることもあります。

一般的には、次のような内容を記載します。

・購入希望価格
・手付金の予定額
・契約希望日
・決済・引渡し希望日
・住宅ローン利用の有無
・住宅ローン借入予定額
・その他の購入条件

例えば、「3,000万円で売り出されている物件」に対して、

売出価格    3,000万円
購入希望価格  2,900万円
手付金      100万円
契約希望日   9月20日
決済希望日   10月31日
住宅ローン   利用する

といった条件を記載して売主へ提出します。

売主はその内容を確認して、価格や契約条件について検討します。

購入申込書(買付証明書)の基本的な内容や売主が確認するポイントについてはこちらで詳しく解説しています。

■購入申込書を出したら売買契約は成立する?

一般的な不動産売買では、購入申込書を提出しただけで直ちに売買契約が成立するわけではありません。

購入申込書を提出した後は、通常次のように進みます。

購入申込書を提出
   ↓
売主が条件を確認
   ↓
価格・契約条件を交渉
   ↓
条件について調整
   ↓
重要事項説明
   ↓
売買契約書へ署名・押印
   ↓
手付金の授受

購入申込書の段階では、その後に売買契約書を作成し、正式な契約を締結することが予定されているのが一般的です。

そのため、

■購入申込書(買付証明書)
=購入意思・希望条件を伝える書面

■売買契約書
=売主・買主が売買条件について
 正式に契約するための書面

と考えると分かりやすいでしょう。

不動産売買契約書の内容や契約時に確認するポイントについてはこちらで詳しく解説しています。

■購入申込書(買付証明書)に法的拘束力はある?

購入申込書については、一般的に売買契約書と同じような法的拘束力が当然に発生する書面ではないと考えられています。

例えば、

買主
「2,900万円で購入したい」

   ↓

購入申込書を提出

   ↓

売主
「その条件を検討します」

という段階であれば、まだ価格やその他の条件について交渉している途中です。

したがって、購入申込書を提出したという事実だけをもって、

「必ずその不動産を購入しなければならない」とは通常なりません。

ただし、購入申込書という書類の名称だけで法的効果が決まるわけではありません。

書面に記載された内容や、その後の売主・買主の合意状況なども関係するため、個別の取引では注意が必要です。

意思が固まっていない段階で「ほかの購入希望者より先に申し込んで一番手を確保しておこう」と安易に提出することはおすすめできません。

購入申込書が提出されると、不動産会社だけでなく、売主や金融機関なども契約に向けて準備を進めることがあります。

購入意思が十分に固まっていない状態で申込みとキャンセルを繰り返せば、売主や不動産会社との信頼関係に影響する可能性があります。

もちろん、申込み後に新たな事情が判明した場合や、再検討した結果として購入を見送ること自体はあり得ます。その場合は、できるだけ早く不動産会社へ事情を伝えることが大切です。


■売主が購入申込みを承諾したら契約成立?

ここは特に注意したいポイントです。

民法上、契約は必ずしも契約書への署名・押印がなければ成立しないものではなく、原則として当事者の意思が合致することで成立します。

そのため、

購入申込書(買付証明書)を提出
   ↓
売主が条件を確認・承諾
   ↓
売渡証明書が発行される場合もある
   ↓
正式な売買契約へ

と機械的に判断することもできません。

売渡証明書」とは、売主が買主に対して一定の条件で売却する意思を示すために作成される書面です。ただし、売渡証明書が発行されたという事実だけで、必ず売買契約が成立したと判断できるわけではありません。

一方、実際の不動産取引では、購入申込書を提出した後に条件交渉を行い、重要事項説明を受け、正式な売買契約書を締結する流れが一般的です。

したがって、

売主が購入申込書の条件を了承しただけで、必ず売買契約が成立したとも一律にはいえません。

・購入申込書の記載内容
・売主の承諾内容
・価格以外の条件が確定しているか
・正式な契約書を後日作成する予定だったか
・売主、買主のやり取り
・契約締結に向けてどこまで手続が進んでいたか

など、具体的な事情によって判断が変わる可能性があります。


■購入申込書を提出した後にキャンセルできる?

売買契約を締結する前であれば、購入申込みを撤回できるケースが一般的です。

例えば、

購入申込書を提出
   ↓
家族と再検討
   ↓
購入を見送る
   ↓
売買契約は締結しない

ということはあり得ます。

ただし、購入申込書は単なるアンケートではありません。

売主は購入申込みを受けて、ほかの購入希望者との交渉を止めたり、契約準備を進めたりする場合があります。

そのため、購入意思がなくなったのであれば、放置せずできるだけ早く不動産会社へ伝えることが重要です。不動産会社も申込者の為に、売買契約書や重要事項説明書の作成で急いで対応していきます、軽い気持ちでキャンセルすると大変迷惑が掛かります。

意思決定をしっかりして、キャンセルになる要因をなるべく再確認しましょう。

■申込み後のキャンセル要因や確認不足(戸建て)

・駐車スペースに所有車が入るか
・駅までの距離は問題ないか
・上下水道などの整備状況
・外壁や屋根などに大きな補修費用がかからないか
・近隣の状況に問題はないか
・川や崖などが近くにないか
・ハザードマップに該当していないか
・周辺道路で過去に冠水などが発生していないか
■申込み後のキャンセル要因や確認不足(マンション)

・修繕積立金の状況
・管理費・修繕積立金の値上げ予定
・自転車置場の空き
・バイク置場の利用条件
・駐車場の空き
・所有車が駐車場のサイズ制限に収まるか
・2台目の駐車場を確保できるか
・ペット飼育の可否や大きさ・頭数などの制限
・マンション内で把握しておくべき問題がないか
■申込み後のキャンセル要因や確認不足(一般的)

・間取り
・日当たり
・夜間の周辺環境
・飲食店などからの臭いや騒音
・隣地の管理状況
・崖など周辺地形
・ハザードマップ
・家族や両親の意見
・保育園・幼稚園・学校などの状況
・親から資金援助を受ける場合の事前確認
・転校を伴う場合の子どもとの話し合い
・住宅ローンの事前審査

■キャンセルすると違約金はかかる?

通常の購入申込書を提出しただけの段階であれば、売買契約書に定める「違約金」が当然に発生するわけではありません。

まだ売買契約を締結していないためです。

例えば、売買契約前であれば、

購入申込書(買付証明)を提出
   ↓
購入申込み(買付証明)を撤回
   ↓
売買契約を締結しない
   ↓
契約書に定める違約金
→ 通常はそのまま適用されない

という考え方になります。

一方、すでに売買契約を締結した後は話が変わります。

契約締結後に買主の都合で契約をやめたい場合には、

・手付解除
・債務不履行による解除
・違約金
・住宅ローン特約による解除

など、売買契約書の内容に従って判断することになります。

「購入申込書のキャンセル」と「売買契約後の解除」は別のものとして考えましょう。


■申込金を支払っていたらキャンセルできない?

購入申込みの際に、「申込金」「申込証拠金」などの名目で金銭を支払うケースもあります。

この場合も、お金を支払ったという事実だけで売買契約が成立した、または必ず購入しなければならないと一律に判断できるわけではありません。

重要なのは、そのお金が何のために支払われたのかです。

・「購入申込みの意思」を示すための預り金なのか?
・「売買契約の手付金」なのか?
・「契約成立前」の金銭なのか?
・「返還条件」はどうなっているのか?

を確認する必要があります。

特に「申込金」と「手付金」は同じものとは限りません。

支払う場合には、金額だけではなく、その金銭の性質と返還条件を確認しておくことが重要です。


■手付金を払った後のキャンセルとは違う

購入申込書(買付証明)」を提出した段階と、売買契約を締結して手付金を支払った後では、扱いが大きく異なります。

【購入申込書の段階】

正式な売買契約前
   ↓
購入申込みの撤回


【売買契約後】

正式な売買契約成立
   ↓
契約内容に基づいて解除を検討

売買契約後に「やっぱり買うのをやめたい」となった場合、単純な申込みの撤回ではありません。

手付解除ができる場合には、買主は支払った手付金を放棄して契約を解除することになります。

ただし、手付解除ができる期間や条件については、契約内容を確認する必要があります。

売買契約後の手付金と手付解除の基本的な仕組みについてはこちらで詳しく解説しています。
手付解除ができる期限と契約書の「手付解除期日」についてはこちらで詳しく解説しています。

■住宅ローン審査中でも購入申込みは撤回できる?

購入申込書を提出した後、「売買契約前に住宅ローンの事前審査」を行うことがあります。

この段階で、

購入申込書(買付証明書)提出
   ↓
住宅ローン事前審査(仮審査)
   ↓
購入を再検討

となることもあります。

まだ売買契約を締結していないのであれば、購入申込みを撤回できるケースが一般的です。

ただし、売買契約締結後に住宅ローン審査に落ちた場合は別です。

その場合は、売買契約書に住宅ローン特約が定められているか、その適用条件や期限を満たしているかなどを確認する必要があります。

実務では・・・・
①住宅ローン事前審査(仮審査)
②事前審査(仮審査)承認
③購入申込書(買付証明書)提出
④売渡証明書の受領(無い場合も有)
⑤売買契約
の流れが進むことがほとんどです。
住宅ローン事前審査の承認がない状態では、購入申込書(買付証明書)を受領してもらえない不動産会社が多いと思います。

実務では、不動産会社や売主の方針によって、住宅ローンの事前審査で承認を得てから購入申込書(買付証明書)を提出するケースもあります。

特に住宅ローンを利用する場合は、買主の資金計画を確認するため、事前審査の承認を購入申込みの条件とする場合もあります。

売買契約後に住宅ローン審査に通らなかった場合の住宅ローン特約についてはこちらで詳しく解説しています。

■購入申込書を軽い気持ちで出さない方がいい理由

法的拘束力が売買契約書と同じではないからといって、

「とりあえず買付を入れて、後から考えればいい」

という使い方はおすすめできません。

購入申込書が提出されると、売主側では契約に向けた準備が始まることがあります。

・売主が購入条件を検討する
・価格交渉を行う
・契約予定日を調整する
・不動産会社が契約書類を準備する
・売主がほかの購入希望者への対応を変更する

購入する意思がほとんどない状態で申し込んだり、合理的な理由なく交渉を繰り返したりすると、売主との信頼関係を損ねる可能性があります。

購入申込書は、実際に購入を検討したうえで提出する書類と考えましょう。


■複数の物件へ同時に購入申込みしてもいい?

法律上の問題だけではなく、実際の取引として慎重に考える必要があります。

例えば、

A物件へ購入申込み
B物件へ購入申込み
C物件へ購入申込み

   ↓

一番条件のよい物件だけ購入
残りはすべてキャンセル

という申込み方をすると、それぞれの売主が契約準備を進める可能性があります。

購入申込書(買付証明書)を提出する前に、

・本当に購入したい物件か?
・購入希望価格はいくらか?
・住宅ローンの見込みはあるか?
・家族の意見はまとまっているか?
・契約日や引渡日に対応できるか?

を確認しておいた方がよいでしょう。

複数の物件へ安易に購入申込みを行い、その後キャンセルを繰り返すと、売主や不動産会社との信頼関係に影響する可能性があります。購入申込書は、実際に購入する意思を固めたうえで提出することをおすすめします。


■売主は購入申込書を受け取ったら売らないといけない?

「購入申込書(買付証明書)」は買主側から提出するものなので、

買主が満額で申し込んだら、売主は必ず売らないといけない

と思う方もいるかもしれません。

しかし、通常はそうではありません。

例えば3,000万円で売り出している物件に3,000万円の購入申込みが入ったとしても、売主側では、

・住宅ローン利用の有無
・手付金額
・契約希望日
・引渡し希望日
・その他の条件

なども確認します。

また「複数の購入希望者がいる場合」には、売主が条件を比較して契約する相手を決めることもあります。

したがって、

売出価格と同額で申込み
=必ず購入できる

というわけではありません。


■「一番手」なら必ず購入できる?

購入申込みを最初に提出した人を、実務上「一番手」と呼ぶことがあります。

しかし、一番手だから必ずその物件を購入できるという法律上の権利が当然に発生するわけではありません。

例えば、

■一番手
購入価格   2,900万円
住宅ローン  利用あり


■二番手
購入価格   3,000万円
住宅ローン  利用あり

というケースでは、売主がどちらの条件を選ぶか検討することがあります。

また、金額だけでなく契約日や引渡日なども判断材料になる場合があります。

購入申込みの順番は実務上重要になることがありますが、「一番手=契約成立」ではありません。


■売買契約前にキャンセルするときはどうすればいい?

購入申込みを撤回すると決めた場合は、できるだけ早く担当する不動産会社へ連絡しましょう。

理由についても簡潔に伝えておくと、その後の処理がスムーズです。

購入を見送ることを決定
   ↓
不動産会社へすぐ連絡
   ↓
購入申込みを撤回する旨を伝える
   ↓
申込金等がある場合は返還条件を確認

電話だけではなく、必要に応じてメールなど記録が残る方法でも伝えておくとよいでしょう。

また、購入申込書に申込みの有効期限や撤回に関する記載がある場合は、その内容も確認してください。


■購入申込書を提出する前に確認するポイント

購入申込書を提出する前には、最低限次の内容を確認しておきましょう。

・購入希望価格
・自己資金
・住宅ローン借入予定額
・手付金予定額
・契約希望日
・決済・引渡し希望日
・住宅ローン審査の状況
・購入条件
・家族の意思
・申込金がある場合の返還条件

特に価格交渉を伴う場合は、

「この価格なら本当に購入する」

という金額で申し込むことが重要です。

売主が値下げを了承した後に、特に事情もなく購入を取りやめれば、その後もう一度同じ物件を購入したいと思っても、売主が交渉に応じてくれない可能性もあります。


■購入申込書から売買契約までの流れ

一般的な流れを整理すると、次のようになります。

① 購入したい物件を決める
   ↓
② 購入条件を検討する
   ↓
③ 購入申込書を提出する
   ↓
④ 売主と価格・条件を調整する
   ↓
⑤ 条件がまとまる
   ↓
⑥ 重要事項説明を受ける
   ↓
⑦ 売買契約書の内容を確認する
   ↓
⑧ 売買契約を締結する
   ↓
⑨ 手付金を支払う

購入申込書と売買契約書は、同じものではありません。

ただし、契約成立の有無は書類の名称だけで決まるものでもないため、売買契約前だから何をしても問題ないと考えないことが大切です。


■よくある質問 Q&A

1. Q. 購入申込書を書いたら必ず家を買わないといけませんか?

一般的な不動産取引では、購入申込書を提出しただけで直ちに正式な売買契約が成立するとは通常考えられていません。

ただし、書面の内容や当事者間の合意状況などによって判断が変わる可能性があるため、一律に「絶対に法的拘束力がない」と考えるのは避けた方がよいでしょう。

2. Q. 売主が購入申込みを了承した後でもキャンセルできますか?

正式な売買契約前であれば購入申込みを撤回できるケースが一般的ですが、売主の承認があったという一点だけで判断できる問題ではありません。

書面の内容や交渉経緯、合意の程度などによっては個別の判断が必要になります。

3. Q. 購入申込みをキャンセルしたら違約金がかかりますか?

購入申込書を提出しただけの段階であれば、売買契約書に定める違約金が当然に発生するわけではありません。

ただし、すでに売買契約が成立している場合は、契約内容に基づいて判断する必要があります。

4. Q. 申込金を払っていたら返してもらえますか?

「申込金」という名称だけでは判断できません。

何のために支払った金銭なのか、売買契約が成立しているのか、返還についてどのような取り決めになっているのかを確認する必要があります。

5. Q. 一番手で買付を入れれば必ず購入できますか?

必ず購入できるわけではありません。

購入申込みの順番は実務上考慮されることがありますが、売主が価格、住宅ローン、契約日、引渡日などの条件を比較して契約相手を判断する場合があります。


■まとめ

購入申込書(買付証明書)は、買主が売主へ購入意思や希望条件を伝えるために使用される書面です。

一般的な不動産取引では、購入申込書を提出しただけで、直ちに正式な売買契約が成立するとは通常考えられていません。

【購入申込書】

購入したい意思・条件を伝える
   ↓
価格や契約条件を調整
   ↓
正式な売買契約へ進む


【売買契約後】

契約上の権利・義務が発生
   ↓
解除する場合は契約内容を確認

ただし、購入申込書という名称だけで法的効果が決まるわけではありません。

・購入申込書の内容
・売主の承諾内容
・条件交渉の状況
・当事者のやり取り
・正式な契約書を作成する予定だったか
・契約手続がどこまで進んでいたか

などによって判断が変わる可能性があります。

また、売買契約前に購入を見送る場合でも、売主や不動産会社は契約準備を進めていることがあります。

購入意思がなくなった場合は放置せず、できるだけ早く不動産会社へ連絡することが重要です。

購入申込書は「とりあえず物件を押さえるための紙」と考えるのではなく、購入価格や住宅ローン、契約条件などを確認したうえで提出しましょう。

コメント