不動産の売買契約を締結した後に、
「やっぱり購入するのをやめたい」
「住宅ローン審査に落ちれば白紙解除できる?」
「審査に必要な書類を出さなければローン特約を使える?」
「別の借入れをして審査に落ちた場合はどうなる?」
と考える方もいるかもしれません。
結論からいうと、買主が意図的に住宅ローンの承認を得られないようにした場合、住宅ローン特約による解除が認められない可能性があります。
住宅ローン特約は、買主が通常必要とされる手続きを行ったにもかかわらず、予定していた融資の承認を得られなかった場合に備えるためのものです。
住宅ローンを申し込んだ
↓
必要な審査手続きを行った
↓
金融機関から融資承認を得られなかった
↓
住宅ローン特約の条件を満たせば
契約を解除できる
一方、
購入をやめたくなった
↓
わざと審査に落ちるような行動をする
↓
住宅ローン特約で白紙解除する
という制度ではありません。
実際に融資利用特約をめぐっては、買主が必要な融資申込手続きを行ったか、融資を受けられなかった原因が買主側にあるのかなどが争われた裁判例もあります。レティオ
- ■住宅ローン特約とは?
- ■住宅ローンに落ちれば必ず解除できる?
- ■わざと住宅ローン審査に落ちたらどうなる?
- ■どのような行為が問題になる?
- ■住宅ローンを申し込まなければ解除できる?
- ■必要書類を出さずに審査に落ちた場合は?
- ■審査途中で住宅ローンを取り下げた場合は?
- ■新しく借金をして審査に落ちたら?
- ■転職や退職をした場合は?
- ■事前審査に通っていても本審査で落ちることはある?
- ■希望していた金額より融資額が少なかった場合は?
- ■別の銀行なら借りられる場合はどうなる?
- ■住宅ローン特約の解除期限を過ぎたら?
- ■住宅ローン特約で解除できたら手付金はどうなる?
- ■手付解除との違いは?
- ■購入をやめたくなった場合はどうすればいい?
- ■住宅ローン審査中に買主が注意すること
- ■よくある質問 Q&A
- ■まとめ
■住宅ローン特約とは?
住宅ローン特約とは、買主が住宅ローンを利用して不動産を購入する場合に、予定していた融資の承認を得られなかったときの取扱いを定める特約です。
一般的な契約では、次のような内容を確認します。
・融資の申込先(銀行など)
・融資の承認予定額(売買価格+諸経費等)
・融資の承認取得期日
・融資の利用特約による解除期日
・融資承認が得られなかった場合の取扱い
「住宅ローン特約の内容」は契約によって異なるため、実際には売買契約書に記載された内容を確認する必要があります。
不動産適正取引推進機構も、融資利用特約をめぐるトラブル防止のため、解除期日だけでなく金融機関名や融資条件などをできる限り明確にしておくことが望ましいとしています。
契約後に金融機関を変更したい場合は、仲介の不動産会社に事前にご相談を下さい。ローン特約の期日に間に合わない可能性があります。
住宅ローン特約の基本的な仕組みや、本審査に落ちた場合の契約解除についてはこちらで詳しく解説しています。
■住宅ローンに落ちれば必ず解除できる?
住宅ローン審査に落ちたという結果だけで、必ず住宅ローン特約を利用できるとは限りません。
まず確認する必要があるのは、売買契約書の内容です。
① 住宅ローン特約が付いているか
↓
② 対象となる融資内容を確認
↓
③ 必要な融資申込みを行っているか
↓
④ 融資承認を得られなかったか
↓
⑤ 解除期日を確認
↓
⑥ 契約書に従って解除手続きを行う
特に注意したいのが、「ローンに落ちた」という結果だけではなく、そこに至るまでの買主の行動です。仕事で銀行への本審査に行くことが出来ないなどは理由になりません。売買契約を行う前に自分の予定に合わせてローン特約の期日を確定するべきです。但し仲介不動産会社や、引き渡し日(決済日)の期日を考えると日程が遅れると間に合わないケースもございますので事前協議が一番です。
■わざと住宅ローン審査に落ちたらどうなる?
例えば、売買契約後に気が変わり、
購入するのをやめたい
↓
普通にキャンセルすると
手付金などの問題がある
↓
住宅ローン審査に落ちれば
白紙解除できるのでは?
と考えたとします。
そこで買主が意図的に融資承認を得られないような行動をした場合、住宅ローン特約を利用できるかについて問題になる可能性があります。
住宅ローン特約は、買主が自由に契約をやめるための制度ではありません。
買主自身が融資承認を妨げた事情がある場合には、単純に「金融機関から否決されたから住宅ローン特約で解除できる」とは判断できません。
融資利用特約に関する裁判例でも、買主が融資申込手続きを怠ったか、融資拒絶について買主に帰責事由があったかなどが具体的に争われています。
■どのような行為が問題になる?
実際には契約内容や事情によって判断されますが、例えば次のような行為は注意が必要です。
・住宅ローンの申込み(本審査)をしない
・金融機関から求められた必要書類を提出しない
・審査途中で自分から申込みを取り下げる
・金融機関からの確認に意図的に対応しない
・虚偽の内容を金融機関へ申告する
・融資承認を得られないよう意図的に行動する
・逮捕され会社を退職
・自己都合での退職
・審査途中に他のローンや融資を組み借入できる範囲を超えてしまい否認された
重要なのは、「金融機関から否決された」という結果だけを見ないことです。
なぜ融資承認を得られなかったのか、その過程も問題になる可能性があります。
■住宅ローンを申し込まなければ解除できる?
売買契約に「住宅ローン特約」が付いているからといって、買主が何もしなくても解除できるわけではありません。
例えば、
売買契約を締結
↓
住宅ローンを申し込まない
↓
解除期日になった
↓
「融資を受けられなかったので解除します」
というケースです。
そもそも住宅ローンを申し込んでいなければ、金融機関による融資審査も行われていません。
このような場合に住宅ローン特約を利用できると考えるのは危険です。
契約書に定められた融資申込みについて、買主は必要な手続きを適切に進めることが重要です。
「住宅ローン特約」がある場合は、期日経過以降は「手付解約」「違約解約」となることが多いです。違約解約の場合は売買価格の10%~20%での設定が多い為、契約前に予定をしっかり考えておく事や約束した期日をしっかり守れるように安易に考えないということがとても大切です。
■必要書類を出さずに審査に落ちた場合は?
「住宅ローンの本審査」では、金融機関からさまざまな書類の提出を求められます。
例えば、
■本人確認書類
■収入を確認する書類
■住民票 →本籍や個人番号の記載不要
■所得証明書」 →役場やコンビニで取得できます
■源泉徴収票または確定申告書
→確定申告を行っている方、または個人事業主。個人事業主の場合は2~3期分
■勤務先に関する書類
→勤続年数が3年未満の場合は雇用契約書を求められる場合が多い
■売買契約書 →基本コピーでも良いが、原本を望まれることが多い。
■重要事項説明書 →基本コピーでも良いが、原本を望まれることが多い。
■物件関係書類
→登記簿謄本(土地建物)、字図、接道部分の謄本、測量図、物件平面図、建物平面図など)
■既存借入れに関する資料
→仮審査時に提出していることが多いので不要となるかもしれません
などです。
金融機関から必要書類を求められているにもかかわらず、買主が意図的に提出しなかったため審査が進まなかった場合には、通常の「融資否決」とは事情が異なります。
必要書類を提出
↓
金融機関が審査
↓
融資否決
と、
必要書類を提出しない
↓
審査が進まない
↓
融資を受けられない
は同じではありません。
■審査途中で住宅ローンを取り下げた場合は?
買主自身が住宅ローンの申込みを取り下げた場合も注意が必要です。
例えば、
住宅ローン本審査中
↓
物件を買いたくなくなった
↓
買主から銀行へ
住宅ローン申込みを取り下げ
↓
住宅ローン特約で解除
という流れです。
これについても、単純に「融資を受けられなくなったから解除できる」とは限りません。
なお、融資申込みを取り下げた事案であっても、裁判所が具体的な事情を検討したうえで住宅ローン特約による解除を認めた例があります。
つまり、「取下げ=必ず特約が使えない」と一律に判断できるわけでもありません。
融資が実行されなかった原因、契約内容、買主の資力や行動などを含めて個別に判断されます。
■新しく借金をして審査に落ちたら?
売買契約後から住宅ローン実行までの間に、新たな借入れを行うことも注意が必要です。
例えば、
・自動車ローンを組む
・カードローンを利用する
・キャッシングを利用する
・高額な分割払いを利用する
などです。
住宅ローン審査では、収入だけではなく既存の借入状況なども審査対象になる場合があります。
そのため、売買契約後に新たな借入れを行った結果、融資条件に影響する可能性があります。
ただし、新たな借入れをしたから直ちに住宅ローン特約が使えなくなる、と一律に判断できるものではありません。
問題となる場合は、借入れの時期や目的、融資否決との関係、契約内容などを個別に確認する必要があります。
■転職や退職をした場合は?
住宅ローン審査中に転職や退職をすると、金融機関の審査に影響する可能性があります。
特に、
売買契約時(会社員)
↓
住宅ローン審査中に退職
↓
収入状況が変化
↓
融資条件に影響
というケースでは注意が必要です。
転職・退職にはさまざまな事情があるため、それだけで住宅ローン特約の適用可否を一律に判断することはできません。
しかし、売買契約後から住宅ローン実行までの間に勤務状況や収入などが大きく変わる場合は、早めに金融機関や不動産会社へ相談した方がよいでしょう。
あくまでも今の勤め先で給料が出ているから、その分で返済が可能を審査しているわけですから必ず住宅ローンを借りる場合はお仕事を続けるという気持ちで融資審査を進めてください。
■事前審査に通っていても本審査で落ちることはある?
住宅ローンの事前審査に承認されていても、本審査の承認が保証されるわけではありません。
住宅ローン「事前審査(仮審査ともいう)」
↓
融資先の3営業日~5営業日
↓
承認(事前審査または仮審査ともいう)
↓
売買契約
↓
住宅ローン「本審査」「団信の審査」
↓
承認または否決
本審査では、申告内容や提出書類、物件などについて改めて審査されます。
そのため、事前審査で承認されていても、本審査で融資承認を得られない可能性はあります。
この場合も、住宅ローン特約の対象になるかは、実際の売買契約書に記載された融資利用特約の内容を確認することが重要です。
住宅ローンの仮審査・本審査に落ちる主な理由についてはこちらで詳しく解説しています。
■希望していた金額より融資額が少なかった場合は?
「審査に落ちた」というケースだけではありません。
例えば、
融資承認予定額 3,000万円
金融機関の回答 2,500万円
不足額 500万円
というケースも考えられます。
この場合に住宅ローン特約を利用できるかについても、契約書の内容が重要です。
融資利用特約では、
・どの金融機関へ申し込むのか
・いくらの融資を予定しているのか
・どのような融資条件なのか
・承認取得期日はいつか
・解除期日はいつか
などを確認しておく必要があります。
「融資利用特約について」は、条件の記載が不十分なことがトラブルにつながる場合があるため、不動産適正取引推進機構も融資条件などをできる限り明確にすることが望ましいとしています。
■別の銀行なら借りられる場合はどうなる?
例えば、契約書に記載された金融機関では融資承認を得られなかったものの、別の金融機関であれば借りられる可能性があるケースです。
この場合も、
A銀行 融資否決
B銀行 融資可能性あり
だからといって、必ずB銀行にも申し込まなければ住宅ローン特約を利用できない、と一律にはいえません。
どの金融機関・どの融資条件が住宅ローン特約の対象になっているのかが重要です。
裁判例でも、契約書の融資利用特約について、金融機関や融資条件がどのように定められていたかが問題となっています。レティオ
そのため、売買契約時に融資申込先を明確にしておくことが重要です。
■住宅ローン特約の解除期限を過ぎたら?
住宅ローン特約には、通常、融資承認取得期日や解除期日などが定められます。
例えば、
売買契約日 10月1日
融資承認取得期日 10月20日
解除期日 10月25日
と定められている場合です。
解除期限を過ぎてしまうと、住宅ローン特約による解除ができなくなる可能性があります。
実際に、融資利用特約の期限経過後に解除が問題となり、特約による解除が認められなかった裁判例もあります。レティオ
融資承認が得られていない場合は、期限直前まで放置せず、不動産会社へ早めに連絡しましょう。
■住宅ローン特約で解除できたら手付金はどうなる?
契約書に定められた住宅ローン特約に基づいて適法に契約が解除された場合、一般的には売主が受領している手付金などは買主へ返還する内容になっています。
例えば、
売買代金 3,000万円
手付金 100万円
住宅ローン本審査
↓
融資否決
↓
住宅ローン特約の条件を満たして解除
↓
手付金100万円を返還
このように、買主が手付金を放棄して解除する「手付解除」とは仕組みが異なります。
■手付解除との違いは?
住宅ローン特約による解除と手付解除は別の制度です。
【住宅ローン特約による解除】
契約で予定した融資承認が得られない
↓
特約の条件を満たして解除
↓
一般的には手付金返還
【買主からの手付解除】
買主都合で契約を解除
↓
手付解除の条件を満たして解除
↓
買主は手付金を放棄
「物件を買いたくなくなった」という理由だけであれば、住宅ローン特約とは別に、手付解除ができる状況なのかを確認する必要があります。
売買契約後の手付金と手付解除の基本的な仕組みについてはこちらで詳しく解説しています。
■購入をやめたくなった場合はどうすればいい?
売買契約後に購入をやめたい事情が生じた場合、住宅ローン審査を意図的に不承認へ誘導するのではなく、まず契約書を確認することが重要です。
確認する内容は次のとおりです。
・手付解除ができるか
・手付解除期日はいつか
・相手方が履行に着手していないか
・住宅ローン特約の内容
・その他の解除条件があるか
・違約解除となる場合の違約金
そのうえで、仲介する不動産会社へ早めに相談しましょう。
契約後の解除は、どの解除方法を使うかによって手付金や違約金などの取扱いが変わる可能性があります。
手付解除ができる期限と契約書の「手付解除期日」についてはこちらで詳しく解説しています。
■住宅ローン審査中に買主が注意すること
住宅ローン特約をめぐるトラブルを防ぐためには、契約後も審査手続きを適切に進めることが重要です。
・契約書に記載された融資条件を確認する
・必要な住宅ローン申込みを速やかに行う
・金融機関から求められた書類を提出する
・追加確認には速やかに対応する
・審査中の新たな借入れは慎重に判断する
・転職や退職など状況が変わる場合は相談する
・融資承認取得期日を確認する
・住宅ローン特約の解除期日を確認する
・問題が発生したら早めに不動産会社へ連絡する
「住宅ローンが通らなければ解除できるから大丈夫」と考えるのではなく、契約内容に従って審査を進めることが大切です。
■よくある質問 Q&A

1. Q. わざと住宅ローン審査に落ちれば白紙解除できますか?
買主が意図的に融資承認を得られないようにした場合、住宅ローン特約による解除が認められない可能性があります。
住宅ローン特約は、購入を自由にやめるための制度ではありません。
2. Q. 必要書類を出さずに審査が進まなかった場合は?
金融機関から求められた必要書類を意図的に提出しなかった場合は、通常の融資否決とは事情が異なります。
買主が必要な融資申込手続きを行ったかどうかが問題になる可能性があります。レティオ
3. Q. 事前審査に通って本審査に落ちた場合は解除できますか?
住宅ローン特約の条件を満たしていれば解除できる可能性があります。
事前審査に通っていたという理由だけで本審査の承認が保証されるわけではありません。実際には売買契約書の融資条件や解除期日などを確認します。
4. Q. 住宅ローン特約で解除したら手付金は戻りますか?
契約書に定められた住宅ローン特約に基づいて解除した場合、一般的には手付金は返還される内容になっています。
ただし、実際の取扱いは契約書を確認してください。
5. Q. 契約後に単純に買いたくなくなった場合は?
住宅ローン特約とは別の問題です。
手付解除が可能な状況であれば手付解除を検討するなど、売買契約書に定められた解除方法を確認する必要があります。
■まとめ
住宅ローン特約は、住宅ローンを利用して不動産を購入する買主にとって重要な特約です。
しかし、
購入をやめたい
↓
わざと住宅ローン審査に落ちる
↓
住宅ローン特約で白紙解除
という目的で利用する制度ではありません。
重要なのは、融資が承認されなかったという結果だけではなく、契約内容と融資審査に至るまでの経緯を確認することです。
・住宅ローン特約の内容
・融資申込先
・融資予定額
・買主が必要な手続きを行ったか
・融資承認を得られなかった理由
・融資承認取得期日
・解除期日
などを確認する必要があります。
融資利用特約をめぐる裁判でも、買主が融資手続きを怠ったか、融資拒絶について買主に帰責事由があったか、契約でどのような融資条件が定められていたかなどが具体的に検討されています。レティオ
売買契約後に購入をやめたくなった場合は、住宅ローン審査を意図的に不承認へ誘導するのではなく、手付解除を含め、契約書上どのような解除方法があるのかを確認することが重要です。



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