手付解除の「期限前」でも解除できない?「履行に着手した場合」の注意点

契約

不動産売買契約では、手付解除の期限前であっても、相手方が履行に着手したことによって解除できなくなる場合があります。

ただし、契約書で「手付解除期日まで解除できる」と定めている場合は、相手方が履行に着手していても、期日まで手付解除できることがあります。

そのため、手付解除ができるかどうかは、契約書の内容によって判断する必要があります。

■「手付解除の期限前」でも解除できない場合はある?

民法第557条第1項では、手付解除ができるのは、原則として相手方が契約の履行に着手するまでとされています。

例えば、次のような場合です。

【例】

売買契約日:10月1日
手付解除期日:10月31日
決済・引渡し日:11月30日

10月20日:売主が契約の履行に着手
10月25日:買主が手付解除を希望

この場合、民法の原則では、売主が履行に着手した後であるため、買主は手付解除できません。

しかし、不動産売買契約書に「10月31日まで手付解除を認める特約」があれば、その取り決めによって解除できる場合があります。

つまり、手付解除期日が決まっていても、契約書の文言によって結論が異なります。

■「手付解除期日がある」契約では何を確認する?

重要なのは、契約書にどのような解除条件が定められているかです。

1. 「相手方の履行着手まで」と定めている場合

手付解除期日と相手方の履行着手のうち、早い時点までしか解除できない取り決めであれば、期日前でも解除できなくなります。

例えば、10月31日が解除期日でも、売主が10月20日に履行に着手していれば、買主は10月25日に手付解除できません。

2.「 指定した期日まで」解除できる場合

契約書で、履行の着手の有無にかかわらず、10月31日まで手付解除できると定めている場合は、期日前に相手方が履行に着手していても解除できることがあります。

一般的な不動産売買契約では、手付解除期日を明確に定め、期日までの解除を認める方式も用いられています。

そのため、相手方が履行に着手したという理由だけで、手付解除期日前の解除が必ずできなくなるわけではありません。

■履行に着手したかどうかは誰を基準に判断する?

民法第557条第1項では、解除しようとする人ではなく、相手方が履行に着手したかどうかが重要です。

【」買主が」手付解除する場合】→ 売主が履行に着手しているか?

【「売主が」手付解除する場合】→ 買主が履行に着手しているか?

例えば、買主が住宅ローンの本審査を申し込んだだけでは、通常、売買契約の履行に着手したとは扱われません。

一方、契約に基づく中間金の支払いや、所有権移転に向けた具体的な履行行為などは、履行の着手に該当する場合があります。

ただし、履行に着手したかどうかは、行為の内容や契約上の義務などを踏まえて判断されます。

■「売主が宅建業者の場合」は取扱いが異なる

売主が宅建業者で、買主が宅建業者ではない場合には、宅地建物取引業法第39条が適用されます。

この場合、買主は、売主が履行に着手するまでは手付を放棄して解除できます。

例えば、手付解除期日が10月31日と定められていても、売主が履行に着手していなければ、11月1日以降も買主の手付解除を認める必要があります。

売主が履行に着手する前であるにもかかわらず、期日が過ぎたことだけを理由に買主の手付解除を制限する特約は、買主に不利なため無効となります。

一方、個人が売主となる一般的な不動産売買では、当事者が合意した手付解除条項を確認することが重要です。

■よくある質問(Q&A)

Q1. 手付解除期日前なら必ず解除できますか?

必ずしもそうではありません。契約書に相手方の履行着手による制限がある場合は、期日前でも手付解除できなくなることがあります。

Q2. 売主が履行に着手していても、買主は手付解除できますか?

契約書で履行着手後も指定期日まで解除できると定めていれば、解除できる場合があります。契約書の条項を確認する必要があります。

Q3. 買主が住宅ローンの本審査を申し込むと、履行の着手になりますか?

通常、住宅ローンの本審査を申し込んだだけでは、売買契約の履行に着手したとは扱いません。

Q4. 手付解除できなくなった場合、売買契約は解除できませんか?

手付解除ができなくても、住宅ローン特約による解除や、売主・買主双方の合意による解除などが認められる場合があります。

■まとめ

手付解除の期限前でも、相手方が履行に着手したことによって解除できなくなる場合があります。

ただし、契約書で指定した期日まで解除できると定めている場合は、相手方の履行着手後でも手付解除できることがあります。

手付解除期日だけで判断せず、契約書の解除条項を確認することが重要です。

履行の着手に該当する具体的な行為については、「履行に着手」とは?手付解除できなくなるタイミングを解説をご覧ください。

手付解除期日の基本的な考え方については、手付解除の期限はいつまで?契約書の「手付解除期日」を解説で解説しています。

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