不動産売買では、売主の契約不適合責任を免責する特約を設けることができます。
ただし、売主が個人なのか宅建業者なのかによって、免責できる範囲は異なります。
特に、売主が宅建業者で、買主が宅建業者ではない場合、契約不適合責任を全面的に免責する特約は原則として無効です。
今回は、契約不適合責任の免責が認められるケースと、売買契約書で確認したいポイントを解説します。
■契約不適合責任の免責とは?
契約不適合責任とは、引き渡された不動産が契約内容に適合していない場合に、売主が負う責任です。
例えば、売買契約の内容によっては、引渡し後に雨漏りやシロアリ被害などが見つかった場合、買主から修補や損害賠償などを請求されることがあります。
契約不適合責任を免責する特約とは、こうした契約不適合について、売主が責任を負わない旨を取り決めるものです。
ただし、免責特約を設ければ、売主がどのような場合でも責任を負わなくなるわけではありません。
売主・買主の立場や法律上の制限を確認する必要があります。
■売主が個人の場合は免責できる?
個人が自宅などを売却する場合、売主と買主の合意によって、契約不適合責任を免責することは原則として可能です。
例えば、築年数の古い中古戸建てを現状のまま売却する場合などに、契約不適合責任を免責する特約が設けられることがあります。
ただし、民法第572条では、売主が知りながら買主に告げなかった事実などについては、免責特約があっても責任を免れないと定められています。
【例】
売主が過去の雨漏りを知っていた
↓
買主に雨漏りの事実を告げなかった
↓
契約不適合責任の免責特約があっても責任を負う可能性がある
そのため、免責特約を設ける場合でも、売主が把握している不具合や修繕履歴などは、買主に正確に伝えることが重要です。
なお、売主が個人であっても、事業として売却する場合などは、消費者契約法による制限が問題になることがあります。
そのため、売主が把握している不具合や過去の修繕履歴などについては、些細なことでも物件状況報告書(告知書)に記載し、買主に正確に伝えておくことが大切です。
■売主が宅建業者の場合は免責できる?
売主が宅建業者で、買主が宅建業者ではない場合には、宅地建物取引業法第40条が適用されます。
この場合、種類・品質に関する契約不適合責任について、民法の規定より買主に不利となる特約は、宅建業法第40条で認められたものを除き無効となります。
1. 契約不適合責任を全面的に免責する特約
売主が宅建業者で、買主が一般の個人など宅建業者ではない場合、契約不適合責任を一切負わないとする特約は、原則として無効です。
【例】
売主:宅建業者
買主:一般個人
特約:
「売主は契約不適合責任を一切負わない」→ 原則として無効
中古住宅であっても、築年数が古いことだけを理由に全面免責できるわけではありません。
2. 契約不適合の通知期間を引渡しから2年間とする特約
宅建業法第40条では、民法第566条の通知期間について、引渡しの日から2年以上とする特約を認めています。
例えば、契約書で次のように定める場合です。
【例】
売主:宅建業者
買主:一般個人
種類・品質に関する契約不適合について、買主が売主に通知できる期間を「引渡しの日から2年間」とする→ 宅建業法第40条で認められる期間の特約
ここで注意したいのは、民法と宅建業法で期間の考え方が異なることです。
【民法第566条】
種類・品質に関する契約不適合について、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知する
【宅建業法第40条による特約】
引渡しの日から2年以上の通知期間を定めることができる
つまり、宅建業者が売主の場合、契約不適合責任を全面的に免責することはできませんが、法律で認められた範囲で通知期間を定めることは可能です。
なお、ここでいう2年間は、原則として契約不適合について売主に通知する期間であり、必ずしも修補や損害賠償などの請求をすべて完了させる期限ではありません。
3. 売主・買主ともに宅建業者の場合
売主と買主の双方が宅建業者である場合、宅建業法第40条の制限は適用されません。
そのため、当事者間の合意によって契約不適合責任を免責することも可能です。
ただし、民法上の制限などは別途確認する必要があります。
■売主が宅建業者ではない法人の場合は?
売主が宅建業者ではない法人であっても、買主が消費者に該当する場合は注意が必要です。
この場合、宅建業法第40条が適用されなくても、消費者契約法によって免責特約が制限されることがあります。
例えば、法人が消費者に該当する一般個人に不動産を売却する契約で、売主の契約不適合責任をすべて免責する特約は、消費者契約法により無効となる可能性があります。
したがって、宅建業者でなければ必ず全面免責できるというわけではありません。
売主が事業者に該当するか、買主が消費者に該当するかなどを確認する必要があります。
■免責特約があっても売主が注意したいこと
契約不適合責任を免責する場合でも、売主は次の点に注意しましょう。
【売主が確認したいこと】
・知っている不具合を買主に伝えているか
・物件状況報告書の内容に誤りがないか
・免責する範囲が契約書に明記されているか
・売主と買主の立場に応じた
法律上の制限に違反していないか
また、契約不適合責任を免責することと、売主が売買契約上のすべての義務を免れることは異なります。
例えば、所有権移転登記や物件の引渡しなど、売主が負う別の契約上の義務まで当然に免責されるわけではありません。
免責特約の対象となる責任と、それ以外の契約上の義務を区別しておくことが重要です。
■よくある質問(Q&A)

Q1. 個人が中古住宅を売却する場合、契約不適合責任を免責できますか?
原則として可能です。
ただし、売主が知りながら告げなかった不具合などについては、免責特約があっても責任を負う可能性があります。
Q2. 宅建業者が売主の場合、契約不適合責任を3か月にできますか?
買主が宅建業者ではない場合、種類・品質に関する契約不適合の通知期間を引渡しから3か月とするなど、民法より買主に不利な特約は原則として無効です。
Q3. 宅建業者が売主の場合、引渡しから2年間とする特約は有効ですか?
種類・品質に関する契約不適合について、買主が売主へ通知する期間を引渡しの日から2年間と定める特約は、宅建業法第40条で認められています。
Q4. 契約不適合責任を免責すれば、雨漏りを説明しなくてもよいですか?
いいえ。
売主が知っている雨漏りなどの不具合については、免責特約があっても責任を負う可能性があります。
知っている不具合は買主に正確に伝える必要があります。
■まとめ
不動産売買では、契約不適合責任を免責する特約を設けることができますが、売主と買主の立場によって取扱いが異なります。
【免責特約の基本的な考え方】
個人売主 → 一般個人買主
原則として免責可能
宅建業者売主 → 一般個人買主
全面免責は原則無効
宅建業者売主 → 宅建業者買主
合意による免責が可能
宅建業者ではない事業者 → 消費者
消費者契約法による制限に注意
特に重要なのは、免責特約があるからといって、売主が知っている不具合を告げなくてもよいわけではないことです。
契約不適合責任の基本的な仕組みについては、契約不適合責任とは?中古住宅を売却するときの売主の責任と注意点で解説しています。
また、売買契約書の内容については、不動産売買契約書とは?契約書には何が書いてあるの?も参考にしてください。



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