マイホームを売却して損失が出たら?損益通算、繰越控除の特例を解説

税金

マイホームを売却するとき、

「購入した金額より安く売れたら税金はどうなる?」
「売却して赤字になったら給与所得から差し引ける?」
「住宅ローンが残っていても売却できる?」
「損失を翌年以降に繰り越せる?」

など、利益が出た場合とは反対に、売却して損失が出た場合の税金について疑問に思われる方も多いと思います。

通常、土地や建物を売却して生じた損失は、給与所得など他の所得から自由に差し引くことはできません。

しかし、マイホームの売却については、一定の要件を満たす場合に譲渡損失を給与所得などと損益通算し、それでも控除しきれなかった損失を翌年以後3年間繰り越して控除できる特例があります。

ただし、マイホームを売却して損失が出れば、誰でも利用できるわけではありません。

この記事では、マイホームを売却して損失が出た場合の税金、損益通算、繰越控除、住宅ローンが残っている場合、買換えを行った場合について分かりやすく解説します。


① マイホームを売却して損失が出たらどうなる?

不動産を売却したときの譲渡所得は、基本的に、

売却価格
- 取得費
- 譲渡費用
= 譲渡所得

として計算します。

例えば、

売却価格 2,500万円
取得費  3,000万円
譲渡費用  100万円

だった場合、

2,500万円
- 3,000万円
- 100万円
= ▲600万円

となります。

このように、譲渡所得の計算結果がマイナスになったものが譲渡損失です。

当然ですが、売却による譲渡所得がマイナスであれば、その売却による譲渡所得に対して所得税、住民税が課税されることはありません。

しかし、ここで重要なのが、

「600万円損したから、給与所得から600万円をそのまま差し引ける」

とは限らないということです。


② 不動産売却の損失は給与所得から差し引ける?

原則として、土地や建物を売却して生じた譲渡損失を、給与所得や事業所得など他の所得から差し引くことはできません。

例えば、

給与所得 500万円

不動産売却の損失▲600万円

原則給与所得と自由に相殺できない

ということです。

ただし、自分が住んでいたマイホームの売却については、一定の要件を満たすことで損益通算できる特例があります。

ここが一般的な不動産の売却損失との大きな違いです。


③ マイホームの売却損には2つの特例がある

マイホームの売却で損失が発生した場合に確認したい代表的な制度は、大きく2つあります。

【① マイホームを買い換えた場合】
マイホームを売却

譲渡損失が発生

新しいマイホームを購入

一定の要件を満たす

損益通算、繰越控除

【② 住宅ローンが残っている マイホームを売却した場合】
マイホームを売却

売却価格より住宅ローン残高が多い

一定の要件を満たす

損益通算、繰越控除

似ている制度ですが、適用要件や控除対象となる損失額の考え方が異なります。

そのため、まず自分がどちらに該当する可能性があるのか確認することが重要です。


④ マイホームを買い換えた場合の譲渡損失

まずは、

今のマイホームを売却

損失が出た

新しいマイホームを購入

というケースです。

一定の要件を満たせば、売却したマイホームの譲渡損失を、その年の給与所得や事業所得などから控除できる場合があります。

これを損益通算といいます。

さらに、その年だけでは控除しきれなかった損失については、翌年以後にも繰り越せる場合があります。

例えば、

マイホームの譲渡損失
▲800万円

給与所得
500万円

損益通算

その年に控除しきれない損失
▲300万円

となった場合、この残った損失について、一定の要件を満たせば翌年以後の所得から控除できる可能性があります。


⑤ 損失は何年間繰り越せる?

一定の要件を満たす場合、損益通算しても控除しきれなかった譲渡損失は、売却した年の翌年以後3年間にわたって繰り越して控除することができます。

イメージとしては、

2026年
マイホーム売却

譲渡損失が発生

2026年分の所得と損益通算

まだ損失が残る2027年

繰越控除2028年

繰越控除2029年

繰越控除

となります。

つまり、売却した年を含めて考えると、最長4年間にわたって所得から控除できる可能性があるということです。

2026年マイホーム売却
▲譲渡損失  

2026年
損益通算  

2027年
繰越控除  

2028年
繰越控除  

2029年
繰越控除

⑥ 買換えの場合はどんな条件がある?

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の特例には、複数の要件があります。

代表的なものとして、

・自分が住んでいるマイホームを売却すること
・以前住んでいた場合は、一定の期限までに売却すること

・売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていること
・一定の期間内に新しいマイホームを取得すること
・新しいマイホームについて、一定期間以上の住宅ローンがあること
・新しいマイホームの床面積など、一定の要件を満たしていること

などがあります。

単純に、

「マイホームを売って損をして、新しい家を買った」

だけで利用できるわけではありません。

売却した家と新しく購入した家の両方について、要件を確認する必要があります。


⑦ 住宅ローンが残っているマイホームを売却した場合

もう一つ確認したいのが、住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失が出た場合です。

例えば、

住宅ローン残高
3,000万円

マイホームの売却価格
2,500万円

売却価格より住宅ローン残高の方が多い

というケースです。

一般的に「住宅ローンが売却価格を上回っている状態」を、オーバーローンと呼ぶことがあります。

このような場合も、一定の要件を満たせば、譲渡損失について損益通算、繰越控除の特例を利用できる可能性があります。

こちらの特例では、新しいマイホームを購入することは必須ではありません。


⑧ 住宅ローン残高が多ければ損失全部を控除できる?

ここは注意が必要です。

住宅ローンが残っているマイホームの特例では、譲渡損失がそのまま全額、損益通算の対象になるとは限りません。

例えば、

住宅ローン残高 3,000万円
売却価格    2,500万円

差額500万円

だったとします。

一方で、譲渡所得の計算上の損失が、

譲渡損失
▲800万円

だった場合でも、特例による損益通算の対象となる損失額には上限があります。

住宅ローン残高と売却価格との差額などを確認して計算するため、

「譲渡損失800万円だから、800万円全部を給与所得から差し引ける」

とは限りません。

ここは通常の譲渡損失の計算と混同しないよう注意しましょう。


⑨ 実際に数字を入れて考えてみる

仕組みを分かりやすくするため、単純化した例で考えてみます。

例えば、

マイホームを売却

特例の対象となる譲渡損失600万円
給与所得400万円

だったとします。

損益通算できる場合には、

給与所得 400万円
- 譲渡損失 600万円

その年の所得から
400万円を控除

控除しきれない損失
200万円

というイメージになります。

さらに繰越控除の要件を満たせば、

残った損失
200万円

翌年以後の所得から繰越控除

できる可能性があります。

※実際の所得税は、給与収入そのものから単純に譲渡損失を差し引いて計算するわけではありません。ここでは制度の仕組みを分かりやすくするため単純化しています。


⑩ 繰越控除には所得制限がある

繰越控除を利用する場合には、所得にも注意が必要です。

その年の合計所得金額が3,000万円を超える年については、繰越控除を利用することができません。

そのため、

譲渡損失が残っている

翌年に繰り越した

翌年の合計所得金額が
3,000万円を超えた

という場合には、その年について繰越控除を利用できないことがあります。

売却した年だけでなく、繰越控除を受ける各年の所得も確認する必要があります。


⑪ 確定申告は必要?

これらの特例を利用する場合には、確定申告が必要です。

例えば、

・売却したマイホームの売買契約書
・購入時の売買契約書
・取得費を確認できる資料
・仲介手数料などの譲渡費用の資料
・住宅ローン残高を確認できる資料
・買換えの場合は、新しく購入した住宅の資料

などを確認して申告します。

また、翌年以後に繰越控除を利用する場合には、原則として確定申告を継続して行う必要があります。

「売却して赤字だから確定申告しなくていい」と考えてしまうと、利用できる特例を見落とす可能性があります。


⑫ 「購入価格より安く売れた」だけでは判断できない

ここは特に注意したいところです。

例えば、

4,000万円で購入

3,500万円で売却

500万円損した

と考えてしまいがちです。

しかし、税務上の譲渡損失は単純な購入価格と売却価格の差額だけではありません。

建物については、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて取得費を計算します。

例えば、

購入価格
4,000万円

建物の減価償却などを考慮した取得費
3,200万円

売却価格
3,500万円

であれば、その他の費用などによっては、単純に「500万円の譲渡損失」とはならない可能性があります。

そのため、まずは税務上の取得費、譲渡費用を確認して譲渡所得を計算することが重要です。


よくある質問 Q&A

Q. マイホームを購入価格より安く売ったら必ず譲渡損失になりますか?

必ずしもそうではありません。

建物については減価償却費相当額を差し引いて取得費を計算するため、単純な購入価格と売却価格の差額だけでは判断できません。

Q. マイホームの売却損は給与所得から差し引けますか?

原則として土地、建物の譲渡損失を給与所得などから差し引くことはできません。

ただし、一定の要件を満たすマイホームの譲渡損失については、損益通算できる特例があります。

Q. 新しい家を買わなくても特例を利用できますか?

住宅ローンが残っているマイホームを売却し、一定の要件を満たす場合には、新しいマイホームを購入しなくても利用できる特例があります。

買換えの場合の特例とは要件が異なるため、どちらに該当するか確認しましょう。

Q. 損失は何年間繰り越せますか?

一定の要件を満たせば、損益通算しても控除しきれなかった譲渡損失を、売却した年の翌年以後3年間繰り越して控除できます。

Q. 売却して損失が出ても確定申告した方がいいですか?

特例を利用する場合には確定申告が必要です。

売却による税金が発生しない場合でも、損益通算や繰越控除を利用できる可能性があるため、適用要件を確認しましょう。


まとめ

マイホームを売却して譲渡損失が発生した場合、通常はその損失を給与所得などから自由に差し引くことはできません。

ただし、一定の要件を満たす場合には、

マイホームの譲渡損失

給与所得などと損益通算

控除しきれない損失

翌年以後3年間
繰越控除

できる特例があります。

特に確認したいのは、

・税務上、本当に譲渡損失が発生しているか
・売却したマイホームの所有期間
・住宅ローンが残っているか
・売却価格と住宅ローン残高はいくらか
・新しいマイホームへ買い換えるか
・各特例の適用要件を満たしているか
・確定申告に必要な資料が残っているか

という点です。

「購入した金額より安く売った=その差額がそのまま損失」ではありません。

建物の減価償却、取得費、譲渡費用などを確認したうえで税務上の譲渡損失を計算し、その後に損益通算、繰越控除の特例を利用できるか確認することが重要です。

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