中古住宅を売却するときに、売主が特に気になるのが、
「引渡し後に雨漏りが見つかったらどうなる?」
「古い家でも売主が修理しないといけない?」
「現状有姿で売れば責任を負わない?」
という問題です。
不動産売買では、引き渡した土地や建物が契約の内容に適合していない場合、売主が「契約不適合責任」を負うことがあります。
ただし、引渡し後に見つかった不具合について、売主がすべて責任を負うわけではありません。
重要なのは、
「その不具合があったか」だけではなく、「契約ではどのような状態の不動産を引き渡すことになっていたのか」
という点です。
中古住宅では築年数や建物の状態も物件ごとに異なるため、売却前に不具合を確認し、買主へ説明したうえで、契約書に責任の範囲を明確にしておくことが重要です。
この記事では、契約不適合責任とは何か、中古住宅を売却するときに売主が確認しておきたいポイントを分かりやすく解説します。
- ■契約不適合責任とは?
- ■以前の「瑕疵担保責任」と何が違う?
- ■中古住宅ではどんな不具合が問題になる?
- ■古い家だから不具合があって当然では?
- ■買主が契約不適合を見つけるとどうなる?
- ■履行の追完請求とは?
- ■代金減額請求とは?
- ■損害賠償請求とは?
- ■契約を解除されることもある?
- ■売主はいつまで責任を負う?
- ■個人が売主なら契約不適合責任を免責にできる?
- ■免責特約があれば何を隠しても大丈夫?
- ■「現状有姿」と「契約不適合責任免責」は同じ?
- ■「古いので保証しません」だけでは不十分
- ■設備の故障も契約不適合責任になる?
- ■売主は物件状況報告書を正確に記載する
- ■不具合を知っている場合は先に伝える
- ■修理してから売却した方がよい?
- ■インスペクションを利用する方法もある
- ■宅建業者が売主の場合は注意
- ■契約不適合責任を免責にすれば説明しなくてよいわけではない
- ■中古住宅を売却するときの確認手順
- ■よくある質問 Q&A
- ■まとめ
■契約不適合責任とは?
契約不適合責任とは、売買によって引き渡された目的物が、種類・品質・数量などについて契約の内容に適合していない場合に売主が負う責任です。
例えば、中古住宅の売買で、
「雨漏りはないものとして売買した」
にもかかわらず、引渡し後に契約内容と異なる雨漏りが見つかった場合などが考えられます。
一方、売買契約を締結する前に、
「2階洋室の天井から雨漏りがあります」
と買主へ説明し、買主もその状態を了承して購入したのであれば、その雨漏りが存在すること自体は契約内容と異なるとは限りません。
つまり、不具合がある=必ず契約不適合ではありません。
契約時にどのような状態を前提として売買したのかが重要です。
■以前の「瑕疵担保責任」と何が違う?
2020年4月の民法改正前は、不動産売買で「瑕疵担保責任」という言葉が使われていました。
現在は「契約不適合責任」という考え方に変わっています。
以前の制度では「隠れた瑕疵」が重要な考え方でしたが、現在は、引き渡されたものが契約の内容に適合しているかという点が基本になります。
そのため中古住宅の売買では、
・建物の状態
・確認されている不具合
・売主がどこまで責任を負うのか
・どの部分を現状のまま引き渡すのか
などを契約前に整理しておくことが以前にも増して重要です。
■中古住宅ではどんな不具合が問題になる?
中古住宅で問題になりやすいものとして、例えば次のようなものがあります。
・雨漏り
・シロアリ被害
・建物主要部分の腐食
・給排水管の故障や漏水
・建物の傾き
・設備の故障
・地中埋設物
・土地の土壌に関する問題
ただし、これらが見つかったからといって、すべて自動的に売主の契約不適合責任になるわけではありません。
契約内容や買主への説明、責任を負う範囲についての特約などを確認して判断することになります。
■古い家だから不具合があって当然では?
築年数が経過した中古住宅では、新築住宅と同じ状態を期待することはできません。
例えば、
・建具の動きが悪い
・床や壁にキズがある
・設備が古くなっている
・外壁や屋根が劣化している
・水栓や設備に使用感がある
など、経年による劣化や通常使用による損耗があることは珍しくありません。
しかし、「中古住宅だから何が壊れていても売主は責任を負わない」という意味ではありません。
反対に、「引渡し後に故障したものはすべて売主の責任」というわけでもありません。
中古住宅では、築年数や現況を踏まえたうえで、どの状態を前提に売買するのかを契約で明確にしておくことが重要です。
■買主が契約不適合を見つけるとどうなる?
契約不適合が認められる場合、買主には状況に応じていくつかの権利があります。
代表的なものが、
・履行の追完請求
・代金減額請求
・損害賠償請求
・契約解除
です。
それぞれ内容を見てみましょう。
■履行の追完請求とは?
履行の追完請求とは、契約に適合する状態にするよう売主へ求めることです。
中古住宅では、契約不適合となる不具合を修補することなどが考えられます。
例えば、売主が責任を負う雨漏りが見つかった場合に、買主から修理を求められるケースです。
ただし、どのような方法で追完するかは、契約内容や不具合の状況によって異なります。
また、買主が指定した方法で必ず修理しなければならないとは限りません。
■代金減額請求とは?
契約不適合があり、一定の場合には、買主が売買代金の減額を求めることがあります。
例えば、売主へ修補を求めたにもかかわらず、相当の期間内に修補されない場合などです。
ただし、すべての契約不適合について、買主が直ちに好きな金額を減額できるわけではありません。
不適合の内容や追完の可否などによって判断されます。
■損害賠償請求とは?
契約不適合によって買主に損害が発生した場合、売主に対して損害賠償請求が行われる可能性があります。
ただし、損害賠償については、契約不適合があれば必ず認められるというものではありません。
売主に帰責事由があるかなど、民法上の要件を確認する必要があります。
契約書で損害賠償の範囲について取り決めている場合は、その内容も重要になります。
■契約を解除されることもある?
契約不適合の内容によっては、買主から契約を解除される可能性もあります。
ただし、小さな不具合が一つ見つかっただけで、どのような場合でも契約を解除できるわけではありません。
不適合の内容や程度、追完が可能かどうかなどによって判断されます。
そのため、「契約不適合が見つかった=すぐ契約解除」ではありません。
■売主はいつまで責任を負う?
民法では、種類または品質について契約不適合がある場合、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、原則としてその不適合を理由とする権利を行使できないとされています。
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知っていた場合や、重大な過失によって知らなかった場合などには、この期間制限が適用されないことがあります。
また、「民法で1年だから、不動産売買では必ず1年間責任を負う」という意味ではありません。
売買契約では、当事者間で契約不適合責任を負う期間や範囲について特約を定めることがあります。
売主が個人なのか宅地建物取引業者なのかなどによっても取り扱いが異なるため、契約内容を確認することが重要です。
■個人が売主なら契約不適合責任を免責にできる?
個人が所有する中古住宅を売却する場合、売主と買主の合意によって、契約不適合責任の全部または一部を免責とする特約を設けることがあります。
例えば、「売主は契約不適合責任を負わない」という内容の特約を設けるケースです。
また、すべてを免責するのではなく、
・雨漏り
・シロアリ
・給排水管
・建物構造上主要な部分
など、売主が責任を負う範囲を限定する契約もあります。
中古住宅では物件ごとに築年数や状態が大きく異なるため、売主と買主の合意によって責任範囲を整理することがあります。
■免責特約があれば何を隠しても大丈夫?
いいえ。
ここは非常に重要です。
民法では、売主が契約不適合責任を負わない旨の特約を設けた場合でも、
売主が知りながら買主へ告げなかった事実
などについてまで、その特約によって責任を免れることはできません。
例えば、売主が雨漏りを知っていたにもかかわらず、
「契約不適合責任免責だから言わなくても大丈夫」
と考えて買主へ説明しないのは危険です。
免責特約を設ける場合でも、売主が把握している不具合は不動産会社へ正確に伝え、買主へ説明することが重要です。
■「現状有姿」と「契約不適合責任免責」は同じ?
同じ意味ではありません。
「現状有姿」とは、一般的には現在の状態で物件を引き渡すという意味で使われます。
一方、契約不適合責任免責は、引渡し後に契約不適合が判明した場合の売主の責任について定めるものです。
そのため、「現状有姿と書いてあるから、契約不適合責任もすべて免責される」と単純に考えない方がよいでしょう。
売主の責任を限定・免除したい場合は、契約書や特約で責任の範囲を明確にしておくことが重要です。
■「古いので保証しません」だけでは不十分
築年数の古い住宅を売却するとき、「古い家なので現状渡しです」「設備について保証しません」
と説明することがあります。
しかし、何についてどこまで責任を負わないのか曖昧なままでは、引渡し後のトラブルにつながる可能性があります。
例えば、
・建物について契約不適合責任を負うのか
・設備について責任を負うのか
・雨漏りは対象になるのか
・給排水管は対象になるのか
・経年劣化はどのように扱うのか
などを整理しておくことが重要です。
特に築年数が経過している住宅では、契約書や特約の内容と物件状況報告書などの記載を一致させておくことが大切です。
■設備の故障も契約不適合責任になる?
中古住宅には、
・給湯器
・エアコン
・食洗機
・IHヒーター
・レンジフード
・浴室乾燥機
・床暖房
などの設備が設置されていることがあります。
これらについても、契約内容によっては引渡し後の故障が問題になる可能性があります。
そのため中古住宅の売買では、設備表などを利用して、
・設備があるか
・故障や不具合があるか
・売主が修理義務を負うのか
・現状のまま引き渡すのか
などを確認します。
古い設備について保証しないのであれば、その内容を買主へ説明し、契約上も明確にしておくことが重要です。
■売主は物件状況報告書を正確に記載する
中古住宅の売却では、物件状況報告書などを使用して、売主が把握している土地や建物の状況を買主へ伝えることがあります。
例えば、
・雨漏り
・シロアリ
・建物の傾き
・給排水管の故障
・増改築
・越境
・境界
・近隣との取り決め
などです。
売主として重要なのは、
分からないことを無理に「なし」と記載しないこと
です。
長期間住んでいない相続物件などでは、建物の状態を十分把握できていないこともあります。
その場合は「不明」「確認できていない」など、実際の認識に合わせて記載することが重要です。
■不具合を知っている場合は先に伝える
中古住宅を高く売りたいからといって、不具合を隠すことはおすすめできません。
例えば、
「以前雨漏りしたことがあるが、最近は漏れていない」
「シロアリ防除をしたことがある」
「給排水管から漏水したことがある」
など、売主が把握している事実は不動産会社へ伝えておきましょう。
不具合を事前に説明して買主が了承したうえで契約することは、その状態を契約内容に反映させるという意味でも重要です。
売却後のトラブルを減らすためには、不具合を隠すより、事前に開示して契約内容を明確にする方が重要です。
■修理してから売却した方がよい?
不具合が見つかったからといって、すべて売主が修理してから売却する必要があるわけではありません。
例えば雨漏りがある場合でも、
① 売主が修理してから売却する
② 雨漏りがあることを説明して現状で売却する
③ 修理費用などを考慮して価格を決める
といった方法があります。
築年数の古い住宅では、一部分だけ修理しても他の部分が後から故障する可能性があります。
そのため、「不具合がある=必ず修理して売る」ではなく、建物の状態、売却価格、買主の利用方法などを考えて判断しましょう。
■インスペクションを利用する方法もある
中古住宅では、建物状況調査(インスペクション)を利用する方法もあります。
建物状況調査とは、一定の資格を持つ建築士が、建物の基礎・外壁などの構造耐力上主要な部分や、屋根・外壁などの雨水の浸入を防止する部分について、ひび割れや雨漏りなどの劣化・不具合の状況を調査するものです。
売却前に建物の状態を把握できれば、
・修理してから売却する
・現状で売却する
・買主へ調査結果を説明する
といった判断もしやすくなります。
ただし、インスペクションを実施したからといって、建物のすべての不具合が分かるわけではありません。
■宅建業者が売主の場合は注意
ここまでの「個人売主で免責特約を設ける」という話と、宅地建物取引業者が自ら売主になる場合は分けて考える必要があります。
宅地建物取引業者が売主となり、買主が宅地建物取引業者ではない場合には、宅地建物取引業法による制限があります。
契約不適合責任について、民法より買主に不利となる特約を自由に設けられるわけではありません。
そのため、「中古住宅だから契約不適合責任を全部免責にする」という扱いが、どの売買でも同じようにできるわけではありません。
売主が個人なのか、宅地建物取引業者なのかによって分けて考えることが重要です。
■契約不適合責任を免責にすれば説明しなくてよいわけではない
中古住宅の売却で最も注意したいのが、「免責にしたから調査も説明も不要」という考え方です。
契約不適合責任を免責または限定する場合でも、
・売主が知っている不具合
・過去に発生した問題
・買主の購入判断に影響する事項
・現在確認できている建物の状態
などは整理しておく必要があります。
契約不適合責任の特約は、売主が知っている事実を隠すためのものではありません。
むしろ、物件の状態を買主へ説明したうえで、引渡し後の責任範囲を明確にするためのものと考えた方がよいでしょう。
■中古住宅を売却するときの確認手順
中古住宅を売却するときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
① 売主が把握している不具合を整理する
② 過去の修理・リフォーム履歴を確認する
③ 設備の故障や不具合を確認する
④ 物件状況報告書・設備表などを記載する
⑤ 必要に応じてインスペクションを検討する
⑥ 買主へ物件の状態を説明する
⑦ 契約不適合責任を負う範囲と期間を決める
⑧ 契約書・特約へ内容を反映する
⑨ 契約内容と物件状況報告書などに矛盾がないか確認する
⑩ 契約で決めた状態で物件を引き渡す
特に重要なのは、売主の説明内容と契約書の内容を一致させることです。
「口頭では説明した」「契約書には書いていない」という状態をできるだけ避け、重要な内容は書面に残しておきましょう。
■よくある質問 Q&A

1. Q. 契約不適合責任とは何ですか?
引き渡された土地や建物が、種類・品質・数量などについて契約の内容に適合していない場合に売主が負う責任です。
不具合が存在するかだけではなく、契約でどのような状態の不動産を引き渡すことになっていたのかが重要です。
2. Q. 個人が中古住宅を売却する場合、契約不適合責任を免責にできますか?
売主と買主の合意によって、契約不適合責任を免責または限定する特約を設けることがあります。
ただし、売主が知りながら買主へ告げなかった事実などについてまで、免責特約によって責任を免れることはできません。
3. Q. 現状有姿で売れば契約不適合責任はありませんか?
現状有姿というだけで、当然に契約不適合責任がすべて免責されるわけではありません。
売主の責任を限定する場合は、契約書や特約で責任範囲を明確にすることが重要です。
4. Q. 雨漏りを知っている場合は買主へ伝える必要がありますか?
売主が把握している雨漏りなどの不具合は、売却前に不動産会社へ伝え、買主へ説明しておくことが重要です。
過去に修理して現在は雨漏りしていない場合でも、修理履歴を含めて伝えておいた方がよいでしょう。
5. Q. 引渡し後に設備が壊れたら売主が修理するのですか?
必ず売主が修理するとは限りません。
設備について売主がどこまで責任を負うかは、売買契約や設備表などの内容によって異なります。
古い設備を現状のまま引き渡す場合は、その取り扱いを契約前に明確にしておくことが重要です。
■まとめ
契約不適合責任とは、引き渡された土地や建物が契約の内容に適合していない場合に売主が負う責任です。
中古住宅では、
「不具合がある=必ず売主の責任」
ではありません。
重要なのは、
「契約ではどのような状態の不動産を引き渡すことになっていたのか」
という点です。
中古住宅を売却するときは、
・現在確認できている不具合
・過去の修理履歴
・設備の状態
・物件状況報告書
・契約不適合責任の範囲
・責任を負う期間
・免責や責任限定の特約
などを整理しておきましょう。
また、契約不適合責任を免責する場合でも、売主が把握している不具合を隠してよいわけではありません。
「不具合を事前に説明すること」と「引渡し後の責任範囲を契約で明確にすること」
の両方が重要です。
築年数が経過した中古住宅ほど、曖昧な「現状有姿」だけで済ませず、物件の状態と売主の責任範囲を契約書や特約で具体的に整理してから売却を進めましょう。



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