不動産を初めて売却するとき、
「家を売りたいけど、まず何をすればいい?」
「不動産会社に行く前に準備するものは?」
「査定をしたら、その会社に頼まないといけない?」
「売却してから引渡しまでどのくらいかかる?」
など、分からないことも多いと思います。
不動産売却は、単純に不動産会社へ依頼して買主を探すだけではありません。
査定、媒介契約、販売活動、購入申込み、売買契約、住宅ローンの抹消手続き、残代金決済、引渡しなど、いくつかの手続きを順番に進めていきます。
また、売却する不動産によっては、相続登記、境界の確認、測量、建物の解体、残置物の撤去などが必要になることもあります。
この記事では、初めて不動産を売却する方に向けて、売却を考え始めてから買主へ引き渡すまでの基本的な流れを分かりやすく解説します。
① 不動産売却は何から始める?

まずは、売却する不動産について現在の状況を確認しましょう。
最初からすべての書類を揃える必要はありませんが、
・誰の名義になっているか
・住宅ローンはいくら残っているか
・購入時の売買契約書が残っているか
・土地、建物の登記事項証明書や権利証があるか
・固定資産税の納税通知書があるか
・土地の測量図や境界関係の資料があるか
などを確認しておくと、その後の売却手続きを進めやすくなります。
特に住宅ローンが残っている場合には、現在の住宅ローン残高を確認しておきましょう。
例えば、
住宅ローン残高
2,500万円
↓
売却できそうな価格
2,000万円
だった場合、売却代金だけでは住宅ローンを完済できない可能性があります。
まずは、「現在の状況を確認する」ところから始めると分かりやすいです。
注意は不動産会社の査定額です。売主自身が相場観をしっかり理解していないと、中には売主の気持ちを寄り添いすぎて相場価格よりも高額に査定(売れない価格)で提示があったり、不動産価格が上昇しているエリアだから、もう少し上がるだろうと思い込みすぎて売却できそうな価格を見誤ってしまい、実際の売却価格では住宅ローン残高や売却にかかる諸費用をまかなえず、不足分を手元資金から補わなければならないケースもあります。
相場を十分に理解しないまま、高額な査定額だけが独り歩きし、「この金額で売れる」と思い込んでしまうケースも見受けられます。
別記事でもご紹介しておりますが、「売主自身が相場観をしっかり理解する」これが一番大切です。
② 不動産会社へ査定を依頼する

次に、不動産会社へ査定を依頼します。
査定とは、簡単にいうと、「この不動産なら、どのくらいの価格で売却できそうか」を不動産会社に調べてもらうことです。
査定では、
・周辺の成約事例
・現在販売されている競合物件
・土地、建物の広さ
・築年数、建物の状態
・接道状況
・周辺環境
・市場の動き
などを確認しながら価格を検討します。
ここで注意したいのは、査定価格は売却できることを保証する価格ではないということです。
例えば、
査定価格3,000万円
↓
3,000万円で必ず売れる(×)
という意味ではありません。
査定価格は、売出価格を検討するための一つの判断材料と考えましょう。
③ 査定を依頼したら、その会社で売らないといけない?
査定を依頼したからといって、必ずその不動産会社へ売却を依頼しなければならないわけではありません。
複数の不動産会社へ査定を依頼して、
A社3,000万円
B社3,200万円
C社3,500万円
となることもあります。
ただし、一番高い査定価格を提示した会社が一番高く売ってくれるとは限りません。

査定価格だけではなく、
・査定価格の根拠
・周辺の成約実績
・どのように販売する予定か
・担当者の説明が分かりやすいか
・売却に必要な調査を行っているか
なども確認しましょう。
「なぜこの査定価格なのか」を説明してもらうことが重要です。
査定時の「説明」「営業の姿勢」「資料の準備」などは、その担当者が購入希望者へどのような対応をするのかを判断する一つの材料にもなります。
会社の知名度だけでなく、実際に購入希望者へ対応する営業担当者の説明力や対応も重要です。物件自体を気に入っていても、担当者への不安から購入をためらうケースもあります。
質問に対しても、「根拠のない話」「質問に対して回答が明確ではない」など、購入する方からすれば不安でしかありません。
査定を依頼する目的を、改めて考えてみてください。単に高い査定価格を提示してくれる会社を選ぶことが目的ではありません。今の大事な資産を、しっかり調べてくれて、よい買主に引き継いでくれる方、よい買主と引き合わせてくれる営業担当を探す場です。
また営業担当との相性も大事です。話しづらい、会話がかみ合わない、考え方にずれを感じるなど、営業担当者との相性も確認しておきましょう。これはいざ大事な売買契約を行う際にもっと感じるポイントになります。
しっかり数社お会いされて自分が心から信頼できるパートナーを探されてください。
④ 売出価格を決める
査定が終わったら、実際に市場へ出す売出価格を決めます。査定価格と売出価格は同じとは限りません。

例えば、
査定価格3,000万円
↓
売主の希望3,200万円から売りたい
↓
売出価格3,200万円
とする場合もあります。
反対に、早めの売却を希望している場合には、周辺相場や競合物件を見ながら価格を設定することもあります。
売出価格は、「いくらで売りたいか」だけではなく、「周辺でどのような物件が、いくらで売られているか」も確認しながら決めることが重要です。
不動産会社が提示する価格は「根拠」が必要になります。エビデンスともいいます。それは基本的には過去の事例ですが、過去の事例をすべて「買主」が知ることは少ないです。
どちらかというと、現在ポータルサイト(SUUMO、アットホーム、LIFULL HOME’S)のネット情報を比較して、価格の相場観を持ち、高い安いのイメージを行います。
そうであれば、実際に売出価格を設定する際には今市場で販売されているライバルになるであろう売却中の価格も比較しながら売価設定を行わないといけません。
偶然にほぼ同じ条件(坪数、築年数、間取り、場所の条件、設備、ハウスメーカー)で、相場が3000万円なのに2000万円で売り出しされていたら、同じ時期にだしても3000万円では売れにくいと思います。もちろん色の好みや買主の条件に当てはまって高くても売却できた事例はありますが、そう多い事例ではありません。まずはライバルの価格も確認してみましょう。
⑤ 不動産会社と媒介契約を締結する
不動産会社へ正式に売却を依頼するときには、媒介契約を締結します。
媒介契約には、
・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
の3種類があります。

それぞれ、不動産会社への依頼方法や、指定流通機構への登録義務、売主への報告義務などが異なります。
媒介契約を締結すると、不動産会社が売却活動を開始します。
初めて売却する場合には、契約の名称だけで選ばず、それぞれ何が違うのか説明を受けてから選択しましょう。
少し恋愛にも似ていますが、一社に任せる専任系の媒介契約は、不動産会社側も売主と密に打合せをしながら販売活動を進めやすいという面があります。
よく議題になるのが、専属専任は買主にメリットがない、多数の不動産会社に任せた方がいいという売主さまがいらっしゃいます。否定はしません。
但し、不動産によっては調査や確認が難しいものもありますし、売主さまの告知内容をしっかり理解しないと買主に明確に伝えないといけないことが多い物件だったり、売主自体が誰に何を話したか分からなくなってる場合など、不動産会社としては売買契約書を作る際にとても困る場合もあります。
また販売中も専属専任の場合は、一社だけとしっかり打合せができ、心境や状況を一人の方にしっかり把握して頂けるメリットもあります。それは不動産のような高額なものであれば、売主、買主どちらも安心して売買契約したいはずです。
なので表面的なメリットデメリットばかり追っていると、実際自分にとって大切なことを見失ってしまいます。
⑥ 販売活動が始まる
媒介契約を締結したら、いよいよ販売活動です。

不動産会社によって異なりますが、
・不動産ポータルサイトへの掲載
・不動産会社間の物件情報共有
・自社ホームページへの掲載
・既存顧客への紹介
・チラシなどによる広告
などを行います。
この段階では、物件写真や間取り、土地の広さ、建物の状態、周辺環境などが購入希望者へ公開されます。
居住中の自宅を売却する場合でも、住みながら販売することは可能です。
その場合には、購入希望者から内覧希望が入ったときに日程を調整します。
またポータルサイトでは閲覧状況などが確認できます。定期的な報告の際に送付頂いて、市場の方々がどのように反応しているのか確認しておくと、値下げの時期や相場観がより理解できて納得した売買がしやすくなると思います。
⑦ 購入希望者が内覧する
中古戸建や中古マンションでは、購入希望者が実際に室内を確認する内覧が行われます。

購入希望者は、
・室内の状態
・日当たり
・収納
・設備
・周辺環境
・騒音
・駐車場
・隣地との状況
など、インターネット上の写真だけでは分からない部分を確認します。
売主が居住中の場合には、無理にモデルルームのようにする必要はありませんが、室内を整理し、購入希望者が確認しやすい状態にしておくとよいでしょう。
また、建物や設備について把握している不具合などがある場合には、不動産会社へ事前に伝えておくことも重要です。
室内はとにかく綺麗な方がよいです。「クリーニングするでしょ?」「どうせ引渡し前に荷物はなくなる」「買主がリフォームするだろう」「クロスを張り替えるだろう」と考えて、室内の整理や掃除をしないのはおすすめできません。
匂いでさえも敏感な買主さまは多いです。誰でもできる努力は必ずやっておきましょう。
・空気の入れ替え
・食器や調理器具の整理
・フローリングを拭いておく
・トイレを整理しておく
・庭のごみや落ち葉を拾っておく
・浴室のカビや汚れを掃除しておく
・換気扇を回しておく
などなど
⑧ 購入申込みが入る
購入希望者が、「この不動産を購入したい」となった場合には、購入申込書などが提出されます。

一般的には、
・購入希望価格
・手付金
・住宅ローン利用の有無
・契約希望日
・引渡希望日
・その他の希望条件
などが記載されています。
例えば、
売出価格3,000万円
↓
購入希望価格2,900万円
というように、価格交渉が入る場合もあります。
購入申込みが入ったからといって、必ずその条件で売却しなければならないわけではありません。
価格だけではなく、契約条件や引渡時期などを確認して判断します。
複数の購入申込みが重なった場合には、購入希望価格だけでなく、住宅ローン利用の有無(現金で購入するのか)、契約条件、引渡時期などを含めて、売主がどの申込みを受けるか判断することになります。
⑨ 売買契約を締結する
売主、買主が価格や条件について合意したら、売買契約へ進みます。
一般的には、契約前に宅地建物取引士から買主へ重要事項説明が行われ、その後、不動産売買契約を締結します。
売買契約では、
・売買代金
・手付金
・残代金
・引渡日
・境界に関する事項
・設備に関する事項
・契約不適合責任
・住宅ローン利用に関する事項
・契約解除に関する事項
などを確認します。

売買契約を締結すると、簡単に条件を変更したり、自由に売却を取りやめたりできる段階ではなくなります。
契約書の内容を十分に確認してから署名、押印することが重要です。
宅地建物取引士から説明が必ずありますが、可能であれば、売買契約や重要事項説明の前に「案」を受領し、事前に内容を確認しておくことをおすすめします。契約当日に初めて書類を見るというケースが多いと聞いています。実際室内や現地を1度見ただけで、契約書にはびっちり現状渡し、なお設備故障がたくさんあったなど、売主もその場にいる中で今更契約をやめたいなんて言えないというケースがあります。
気が弱い方はそのまま契約してしまうケースもあると思いますので、事前に案をみて内容に納得したうえで、契約当日を迎えるようにしましょう。
⑩ 契約から引渡しまでに準備する
売買契約が終わっても、すぐに売却手続きがすべて完了するわけではありません。
引渡しまでに、
・引っ越し
・残置物の撤去
・住宅ローンの完済手続き
・抵当権抹消の準備
・境界確認や測量
・契約で約束した補修
・必要書類の準備
などを行います。
必要な準備は物件によって異なります。
例えば土地の場合には確定測量、古家付き土地の場合には建物解体などを売買条件としているケースもあります。
「引渡日までに何をしなければならないのか」を契約時に整理しておきましょう。
⑪ 住宅ローンが残っている場合は?
住宅ローンが残っている不動産には、金融機関の抵当権が設定されていることがあります。
通常、売却する場合には、
買主から残代金を受領
↓
住宅ローンを完済
↓
抵当権を抹消
↓
買主へ所有権移転
という手続きを同日に行います。
そのため、売却が決まったら金融機関へ連絡し、住宅ローンの一括返済に必要な手続きを確認します。
金融機関によっては事前の申込みが必要になるため、決済日の直前ではなく、余裕をもって確認しておきましょう。
⑫ 残代金決済、引渡し

売買契約で決めた日に、残代金の決済と不動産の引渡しを行います。
一般的には、
買主
↓
残代金を支払う
売主
↓
鍵、必要書類などを渡す
司法書士
↓
所有権移転登記などを申請
という流れになります。
住宅ローンが残っている場合には、売却代金から住宅ローンを完済し、抵当権抹消の手続きも行います。
また、固定資産税等については、売買契約で定めた方法により売主、買主間で精算することがあります。
この残代金決済、所有権移転、物件の引渡しまで終わると、不動産売買の大きな手続きは完了です。
⑬ 売却にはどのくらいの期間がかかる?
不動産は、売り出したらすぐに売れるとは限りません。
基本的な流れは、
売却準備
↓
査定
↓
媒介契約
↓
販売活動
↓
購入申込み
↓
売買契約
↓
残代金決済、引渡し
となります。
実際に必要な期間は、
・売出価格
・物件の立地
・築年数や状態
・購入希望者の数
・住宅ローン審査
・測量の有無
・相続登記の有無
・建物解体の有無
などによって大きく変わります。
そのため、「○か月あれば必ず売却できる」と考えず、売却希望時期から逆算して早めに準備を始めることをおすすめします。
⑭ 売却後は確定申告も確認する

不動産の引渡しが終わったら、税金についても確認します。
不動産を売却して譲渡所得が発生した場合には、原則として確定申告が必要になります。
また、
・マイホームの3,000万円特別控除
・所有期間10年超の軽減税率
・マイホームの譲渡損失に関する特例
などを利用する場合にも、確定申告が必要になります。
そのため、
・購入時の売買契約書
・売却時の売買契約書
・仲介手数料の領収書
・測量費、解体費などの資料
・登記関係の資料
は、売却が終わったからといって処分せず保管しておきましょう。
不動産売却の流れをまとめると
初めて売却する場合は、全体を一度に考えると複雑に感じるかもしれません。
基本的には、
① 売却する不動産の状況確認
↓
② 不動産会社へ査定依頼
↓
③ 売出価格を検討
↓
④ 媒介契約
↓
⑤ 販売活動
↓
⑥ 内覧
↓
⑦ 購入申込み
↓
⑧ 売買条件の調整
↓
⑨ 売買契約
↓
⑩ 引渡し準備
↓
⑪ 残代金決済
↓
⑫ 所有権移転、引渡し
↓
⑬ 必要に応じて確定申告
という流れで進みます。

よくある質問 Q&A

Q. 家を売ろうと思ったら最初に何をすればいいですか?
まずは、名義、住宅ローン残高、購入時の資料など、現在の状況を確認してから不動産会社へ査定を依頼すると進めやすくなります。
すべての資料が揃っていなくても査定を依頼することはできます。
Q. 査定を依頼すると費用はかかりますか?
一般的な不動産会社が売却相談のために行う査定は、無料で行われていることが多いです。
ただし、不動産鑑定士が行う不動産鑑定評価とは異なります。
Q. 一番高い査定を出した不動産会社に依頼した方がいいですか?
査定価格だけで判断する必要はありません。
査定価格の根拠、販売方法、周辺の成約事例、担当者の説明内容なども比較しましょう。
Q. 住みながら家を売却できますか?
はい。
中古戸建や中古マンションでは、売主が居住しながら販売活動を行うことも一般的です。
購入希望者の内覧が入った場合には、不動産会社と日程を調整して対応します。
Q. 住宅ローンが残っていても売却できますか?
売却することは可能です。
ただし、原則として引渡しまでに住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できる状態にする必要があります。
売却価格より住宅ローン残高の方が多い場合には、自己資金などを含めて完済できるか確認する必要があります。
まとめ
不動産売却は、
査定
↓
媒介契約
↓
販売活動
↓
購入申込み
↓
売買契約
↓
引渡し準備
↓
残代金決済、引渡し
という流れで進んでいきます。
初めて売却するときに特に確認したいのは、
・不動産の名義は誰になっているか
・住宅ローンはいくら残っているか
・購入時の資料が残っているか
・いくらくらいで売却できそうか
・いつまでに売却したいか
・引渡しまでに測量や解体などが必要か
・売却後に確定申告が必要か
という点です。
不動産は、物件によって売却前に必要な準備が大きく異なります。
特に、相続した不動産、住宅ローンが残っている不動産、境界が分からない土地、古い建物がある土地などは、売却活動を始めてから問題が分かると、契約や引渡しのスケジュールに影響することがあります。
最初からすべてを自分で判断する必要はありませんが、まず現在の状況を整理し、不動産会社へ査定を依頼して、「売却するために何が必要なのか」を確認することから始めるとスムーズです。



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