私道に接している土地で、私道の共有持分を所有していなくても売却することは可能です。
ただし、私道持分がない場合は、道路を通行する権利や、上下水道・ガス管などの工事に必要な権利関係を確認することが重要です。
特に、私道所有者との間で通行や掘削に関する取り決めがない場合、買主の住宅ローンや将来の建て替えに影響することがあります。
今回は、私道持分がない土地を売却する際に、売主が確認しておきたいポイントを解説します。
■私道持分がなくても土地は売却できる?
私道の共有持分がないことを理由に、土地の売却が法律上一律に禁止されるわけではありません。
例えば、自宅の前面道路が私道で、その道路を近隣の方が所有している場合でも、土地と建物を売却することは可能です。
ただし、売却できることと、買主が私道を問題なく利用できることは別の問題です。
私道の権利関係によっては、買主が購入を見送ったり、金融機関の融資審査に影響したりする可能性があります。
そのため、売却前に私道の所有者や利用条件を確認しておくことが大切です。
■私道持分がない場合に確認したいこと
1. 私道の所有者は誰なのか
まず、法務局で私道部分の登記事項証明書や公図(字図)を取得し、所有者を確認しましょう。
各市町村のホームページ(都市計画課、都市整備課)で、閲覧できる場合がございます。各市町村によってシステムも異なり公開していない場合もあります。
私道には、次のような所有形態があります。
【私道の所有形態】
・「近隣住民が共有」している私道
・「特定の個人が単独所有」している私道
・「複数の土地に分筆され、それぞれ所有者が異なる」私道
私道が複数の土地に分かれている場合は、売却する土地から公道までの経路にある私道について、それぞれ所有関係を確認する必要があります。
2. 通行する権利があるか
私道持分がない場合、特に確認したいのが通行に関する権利です。
現在、売主が問題なく通行できていても、買主が購入後も同じ条件で通行できるとは限りません。
【通行について確認すること】
・通行承諾書の有無
・通行地役権などの権利の有無
・徒歩だけでなく車両通行も可能か
・通行料などの負担があるか
・売却後の買主にも取り決めが引き継がれるか
なお、民法には、公道に通じない土地について一定の条件で他人の土地を通行できる制度があります。
しかし、私道持分がない土地であれば、必ず自由に車両通行できるという意味ではありません。
実際の通行状況だけでなく、どのような権利や取り決めに基づいて通行しているのかを確認することが重要です。
3. 上下水道・ガス管の掘削工事ができるか
私道持分がない土地では、通行だけでなく、「私道の掘削」についても確認する必要があります。
例えば、建物を建て替える際に、水道管やガス管の新設・交換工事が必要になる場合があります。
その際、私道を掘削しなければ工事ができないこともあります。
【掘削について確認すること】
・掘削承諾書の有無
・上下水道管やガス管の埋設状況
・配管の新設・交換工事が可能か
・既存の配管が誰の所有物か
・工事費用や道路復旧費用の負担
2023年4月施行の改正民法では、ライフラインの供給を受けるため、一定の条件のもとで他人の土地に設備を設置したり、他人の設備を使用したりできる権利が明確化されました。
ただし、法律に規定があるからといって、私道所有者への事前通知や必要な手続きを省略して、自由に掘削工事ができるわけではありません。
工事の内容によっては、道路管理者や各供給事業者との協議も必要になります。
4. 「建て替えができる道路」なのか

私道持分がないことと、建物の再建築ができるかどうかは別の問題です。
建物を建築するには、原則として建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります。
そのため、前面の私道が建築基準法上の道路に該当するか確認しましょう。
【建築に関する確認事項】
・建築基準法上の道路種別
・道路への接道幅
・セットバックの必要性
・建て替えに関する制限
私道であっても、位置指定道路など、建築基準法上の道路に該当する場合があります。
反対に、見た目が道路でも、建築基準法上の道路に該当しない場合があります。
私道持分の有無だけで、再建築の可否を判断しないことが重要です。
■通行・掘削承諾書がない場合は売却できない?
通行・掘削承諾書がなくても、売却自体は可能です。
ただし、買主が安心して購入できるよう、私道の利用条件を確認することが望まれます。
私道所有者から承諾を得られる場合は、通行や掘削に関する内容を書面で取り決める方法があります。
例えば、次のような事項です。
【承諾書で確認したい内容】
・徒歩や車両による通行
・上下水道・ガス管等の埋設工事
・配管の維持管理や交換工事
・通行料や工事費用の負担
・土地を売却した場合の取扱い
ただし、承諾書があればすべての問題が解決するわけではありません。
承諾の範囲や当事者、将来の所有者への効力などを確認する必要があります。
また、承諾が得られない場合でも、法令上の権利によって対応できる可能性があります。
そのため、承諾書がないことだけで、通行やライフライン工事が一切できないと判断することも適切ではありません。
■私道持分がない土地を売却するときの注意点
売主として重要なのは、私道持分がない事実だけでなく、通行や掘削について確認できている内容を買主に正確に伝えることです。
例えば、通行承諾書がない場合は、その事実を説明する必要があります。
また、私道所有者との間で過去にトラブルがあった場合や、通行料・道路維持費などの負担がある場合も、売却前に不動産会社へ伝えておきましょう。
なお、私道の権利関係が整理されていない場合は、買主が住宅ローンを利用する際に追加資料を求められたり、融資条件に影響したりする可能性があります。
売却活動を始める前に、私道の所有関係と利用状況を整理しておくことが大切です。
■よくある質問(Q&A)

Q1. 私道持分がない土地でも住宅ローンは利用できますか?
利用できる場合があります。
ただし、金融機関によって審査基準が異なり、通行・掘削に関する承諾書や権利関係の資料を求められることがあります。
Q2. 長年通行していれば、今後も自由に通行できますか?
長年通行しているという事実だけで、希望する方法で自由に通行できる権利が必ず認められるわけではありません。
通行に関する合意や地役権などの権利関係を確認する必要があります。
Q3. 私道所有者が掘削を認めない場合はどうなりますか?
民法第213条の2に基づき、一定の条件でライフライン設備の設置や使用が認められる場合があります。
ただし、事前通知や工事方法、費用負担などの問題があり、所有者が拒否している場合には法的な対応が必要になることもあります。
Q4. 私道持分がない土地は売却価格が安くなりますか?
必ず安くなるわけではありません。
ただし、通行や掘削に関する権利が不明確な場合は、買主の購入判断や金融機関の融資に影響し、売却条件が厳しくなる可能性があります。
■まとめ
私道持分がない土地でも、売却することは可能です。
ただし、売却前には、私道所有者、通行する権利、掘削工事の可否、建築基準法上の道路種別などを確認する必要があります。
特に重要なのは、私道を現在利用できているという事実だけでなく、買主が購入後もどのような条件で利用できるのかを確認することです。
私道に接する土地を売却する際の基本的な注意点については、私道に接する土地は売却できる?私道持分・通行・掘削で確認するポイントを解説も参考にしてください。
また、前面道路の問題によって建て替えが難しい場合は、再建築不可物件とは?売却が難しい理由と売るときに確認するポイントを解説で解説しています。



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