親が亡くなり実家を相続したものの、相続人の誰も住む予定がなく、そのまま空き家になってしまうことがあります。
このような場合、
「すぐに売却した方がいい?」
「将来使うかもしれないので残しておく?」
「せっかくなら賃貸に出した方がいい?」
と悩む方も多いと思います。
相続した実家が空き家になった場合、大きく分けると、
・売却する
・賃貸する
・そのまま保有する
という3つの選択肢があります。
どれが正解というわけではありません。
重要なのは、「いつか使うかもしれない」という理由だけで何となく保有し続けるのではなく、今後の利用予定や維持費、建物の状態、相続人の意向などを確認して判断することです。
この記事では、相続した実家が空き家になった場合の3つの選択肢と、それぞれのメリット・注意点を分かりやすく解説します。
- ■相続した実家が空き家になったら最初に確認すること
- ■選択肢① 相続した実家を売却する
- ■相続した空き家には3,000万円特別控除が使える場合がある
- ■選択肢② 相続した実家を賃貸する
- ■古い実家はそのまま貸せるとは限らない
- ■賃貸するとすぐに自由に売却できないことも考えておく
- ■選択肢③ 相続した実家をそのまま保有する
- ■空き家を保有するとどんな費用がかかる?
- ■空き家でも定期的な管理は必要
- ■管理状態が悪い空き家は注意が必要
- ■相続人が複数いる場合は方針を決めておく
- ■売却・賃貸・保有を比較すると
- ■迷ったら「売った場合」と「貸した場合」の数字を出してみる
- ■売却するなら家財を全部片付けてから相談する必要はない
- ■相続した実家を売却するなら税金も確認する
- ■結局、相続した空き家はどうするのがいい?
- ■よくある質問 Q&A
- ■まとめ
■相続した実家が空き家になったら最初に確認すること

売るか貸すかを決める前に、まず現在の状況を整理します。確認したいのは主に次のような点です。
・今後誰かが住む予定はあるか
・相続人は何人いるか
・建物の状態はどうか
・住宅ローンなどの債務は残っていないか
・毎年どのくらい維持費がかかるか
・売却するといくらになりそうか
・賃貸需要がある地域なのか
・家財や荷物がどのくらい残っているか
特に相続人が複数いる場合は、一人だけで今後の利用方法を決められないことがあります。
「売りたい人」と「残したい人」で意見が分かれることもあるため、早めに話し合っておくことが大切です。
■選択肢① 相続した実家を売却する
今後誰も住む予定がない場合は、売却が選択肢になります。売却すれば、空き家を管理し続ける必要がなくなり、売却代金を相続人間で分けることもできます。
相続した家を売却するときの手順はこちらで詳しく解説しています。
1. 売却するメリット

主なメリットは、
・固定資産税等の継続的な負担がなくなる
・建物を管理する必要がなくなる
・修繕費用の負担がなくなる
・売却代金を現金化できる
・複数の相続人で分けやすくなる
ことです。
不動産は現金のように簡単に分割できません。
相続人が複数いる場合、不動産を売却して現金化することで分けやすくなる場合があります。
2. 売却するデメリット

一方で、一度売却すると基本的には取り戻すことはできません。
「将来自分が住みたい」「子どもが使うかもしれない」
という可能性がある場合は、売却前に家族で確認しておきましょう。
また、売却によって利益が出た場合は、譲渡所得税が発生する可能性があります。
相続した不動産では、被相続人が取得したときの取得費や所有期間を引き継いで税金を計算するため、売却前に確認しておくことが重要です。
■相続した空き家には3,000万円特別控除が使える場合がある

一定の要件を満たした相続空き家を売却した場合、譲渡所得から原則として最高3,000万円を控除できる特例があります。ただし、相続人の人数などによって控除限度額が異なる場合があります。
ただし、「相続した空き家ならすべて対象」という制度ではありません。
被相続人が居住していたこと、建物の建築時期、相続後の利用状況、売却時期など複数の要件があります。
また、適用できる期限もあります。
そのため、売却を検討している場合は、「まだ急いで売らなくてもいい」と判断する前に、特例を利用できる可能性と期限を確認しておきましょう。
相続した空き家の3,000万円特別控除の適用条件や注意点はこちらで詳しく解説しています。
■選択肢② 相続した実家を賃貸する

「売却するのはもったいない」という場合は、賃貸住宅として貸す方法も考えられます。
入居者が見つかれば、家賃収入を得ながら不動産を所有し続けることができます。
ただし、空き家だから簡単に貸せるとは限りません。
1. 賃貸するメリット
主なメリットは、
・家賃収入を得られる可能性がある
・不動産を手放さずに済む
・将来自分たちで利用できる可能性を残せる
ことです。
立地や建物の状態によっては、売却せず賃貸として活用した方がよいケースもあります。
2. 賃貸するデメリット
賃貸する場合は、所有者が「大家」になります。
そのため、
・入居者募集
・家賃管理
・設備故障への対応
・修繕
・退去時の対応
・固定資産税等
・火災保険
・管理会社への費用
などが発生する可能性があります。
管理会社へ管理を委託することもできますが、当然費用がかかります。
「毎月家賃が入るから得」と単純に考えるのではなく、必要経費や将来の修繕費まで考える必要があります。
■古い実家はそのまま貸せるとは限らない
相続した実家が築年数の古い住宅の場合、そのまま賃貸できるとは限りません。
例えば、
・給湯器が古い
・エアコンが故障している
・水回りが傷んでいる
・雨漏りがある
・建具が正常に動かない
・電気設備が古い
などの問題があれば、入居者を募集する前に修繕が必要になることがあります。
仮に100万円、200万円と費用をかけて修繕しても、家賃が月5万円程度であれば、修繕費を回収するまでに長い期間がかかります。
そのため、
想定できる家賃収入
-
管理費
-
固定資産税等
-
保険料
-
修繕費
-
その他の経費
まで考えて、賃貸として保有するメリットがあるのか判断することが重要です。
■賃貸するとすぐに自由に売却できないことも考えておく
賃貸を検討するときに忘れやすいのが、将来の売却です。
入居者がいる状態でも不動産を売却すること自体は可能ですが、所有者の都合だけで自由に退去してもらえるとは限りません。
そのため、「とりあえず数年間だけ貸して、売りたくなったら売ればいい」と簡単に考えない方がよいでしょう。
将来的に売却する可能性が高いのであれば、賃貸に出す前に、
・どのくらいの期間保有するのか
・将来誰かが住む予定があるのか
・最終的に売却する予定なのか
・相続空き家の3,000万円特別控除への影響はないか
まで考えておくことが大切です。
■選択肢③ 相続した実家をそのまま保有する
すぐに売却や賃貸をせず、空き家として保有する方法もあります。
例えば、
・将来自分が住む予定がある
・子どもが利用する可能性がある
・家族で今後の方針が決まっていない
・すぐに売却する必要がない
といった場合です。
短期間であれば、急いで処分せずに考える時間を取ることもできます。
ただし、空き家は誰も住んでいなくても費用がかかります。
■空き家を保有するとどんな費用がかかる?
代表的なものは、
・固定資産税、都市計画税
・火災保険
・電気、水道などの基本料金
・庭木や雑草の管理費
・建物の修繕費
・管理会社へ依頼する場合の管理費
などです。
例えば年間20万円の維持費でも、5年間保有すれば100万円です。
さらに、給湯器や屋根、外壁などに修繕が必要になれば、追加費用が発生します。
そのため、
「売らなければお金はかからない」というわけではありません。
空き家として保有する場合は、年間の維持費を一度計算してみましょう。
■空き家でも定期的な管理は必要
誰も住んでいない住宅は、使用していないから傷まないというわけではありません。
例えば、
・室内の換気
・雨漏りの確認
・庭木や雑草の管理
・郵便物の確認
・害虫や害獣への対応
・外壁や屋根の確認
・給排水設備の確認
などが必要になることがあります。
特に遠方に住んでいる場合は、定期的に実家へ行くだけでも時間と交通費がかかります。
自分たちで管理できない場合は、空き家管理サービスなどを利用する方法もあります。
■管理状態が悪い空き家は注意が必要

空き家を保有すること自体が問題なのではありません。
注意したいのは、適切に管理されないまま放置することです。
例えば、
・屋根や外壁が壊れている
・庭木が隣地や道路にはみ出している
・ごみが放置されている
・建物が倒壊する危険がある
といった状態になると、周辺にも影響を与える可能性があります。
空家法では、適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば「特定空家等」になるおそれがある空き家について、「管理不全空家等」として市区町村が指導・勧告を行える制度があります。
勧告を受けた管理不全空家等や特定空家等の敷地は、固定資産税等の住宅用地特例の対象から外れることがあります。
そのため、空き家を残す場合でも適切な管理を続ける必要があります。
空き家を放置した場合に発生する維持費や管理上のリスクはこちらで詳しく解説しています。
■相続人が複数いる場合は方針を決めておく

相続した実家を兄弟姉妹など複数人で相続する場合は、特に注意が必要です。
例えば、
長男
「実家なので残したい」
次男
「誰も住まないなら売却したい」
長女
「賃貸にして家賃収入を得たい」
というように意見が分かれることがあります。
共有状態のまま保有すると、将来売却するときにも共有者との調整が必要になります。
また、
・固定資産税を誰が払うのか
・修繕費を誰が負担するのか
・草刈りなどを誰がするのか
・賃貸する場合の収益をどう分けるのか
といった問題もあります。
そのため、相続人が複数いる場合は、「とりあえず共有で持っておく」とする前に、今後の利用方法や費用負担まで話し合っておきましょう。
相続人が複数いる不動産を売却するときの注意点はこちらで詳しく解説しています。
■売却・賃貸・保有を比較すると
大まかに比較すると次のようになります。
| 売却 | 賃貸 | 保有 | |
|---|---|---|---|
| 現金化 | できる | すぐにはできない | できない |
| 家賃収入 | なし | あり | なし |
| 固定資産税等 | 売却後は不要 | 必要 | 必要 |
| 建物管理 | 売却後は不要 | 必要 | 必要 |
| 修繕費 | 売却後は不要 | 発生する可能性あり | 発生する可能性あり |
| 将来自分で利用 | できない | 入居状況による | できる |
| 管理の手間 | 売却後はなし | あり | あり |
単純に金銭面だけで決めるのではなく、今後その家を使う可能性まで考えて判断します。
■迷ったら「売った場合」と「貸した場合」の数字を出してみる
売却するか賃貸するか迷った場合は、感覚だけで判断せず数字を出して比較すると分かりやすくなります。
まず不動産会社へ、
売却した場合
→ いくらくらいで売れそうか
賃貸した場合
→ 月いくらくらいで貸せそうか
を確認します。
さらに賃貸の場合は、
年間家賃収入
-
管理費
-
固定資産税等
-
保険料
-
修繕費
-
その他の経費
を考えます。
例えば月6万円で貸せるからといって、年間72万円がそのまま利益になるわけではありません。
また、空室期間が発生する可能性もあります。
売却価格と賃料だけではなく、今後何年間保有するのかまで含めて比較することが大切です。
■売却するなら家財を全部片付けてから相談する必要はない
相続した実家には、家具や家電、衣類などがそのまま残っていることがあります。
このような場合でも、家財をすべて処分してからでなければ査定できないわけではありません。
まず現在の状態で査定を受け、
・仲介で売却する
・不動産会社へ買い取ってもらう
・古家付きで売却する
・建物を解体して売却する
などの方法を比較できます。
片付けや解体に費用をかける前に、どのような状態で売却するのがよいのか確認しておきましょう。
相続した家に家財や残置物が残っている場合の片付けと売却方法はこちらで詳しく解説しています。
■相続した実家を売却するなら税金も確認する
相続不動産を売却するときは、売却価格だけではなく税金についても確認しておきましょう。
売却によって譲渡所得が発生すると、所得税や住民税などが課税される可能性があります。
また、一定の要件を満たす場合には、
・相続した空き家の3,000万円特別控除
・相続税の取得費加算の特例
などを利用できる可能性があります。
適用要件や併用関係などがあるため、実際に利用できるかどうかは税務署や税理士などへ確認しましょう。
■結局、相続した空き家はどうするのがいい?
判断するときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
① 今後誰かが住む予定があるか
↓
② 売却するといくらになるか
↓
③ 賃貸するといくらで貸せるか
↓
④ 年間の維持費はいくらか
↓
⑤ 修繕が必要か
↓
⑥ 相続人全員の意向は一致しているか
今後利用する予定が明確であれば、保有する理由があります。
一方、
「誰も住む予定がない」
「賃貸する予定もない」
「管理だけ続けている」
という状態であれば、売却を含めて今後の方針を検討してみてもよいでしょう。
大切なのは、何となく空き家のままにしておかないことです。
■よくある質問 Q&A

1. Q. 相続した実家はすぐに売却した方がいいですか?
必ずすぐに売却しなければならないわけではありません。
今後誰かが利用する予定、維持費、建物の状態、売却価格、賃貸需要などを確認して判断しましょう。
ただし、税制上の特例には期限が設けられているものもあるため注意が必要です。
2. Q. 相続した実家を賃貸にするのと売却するのはどちらが得ですか?
物件によって異なります。
売却価格、想定家賃、修繕費、管理費、固定資産税等、今後の保有期間などを比較する必要があります。
3. Q. 誰も住んでいない家でも固定資産税はかかりますか?
原則として、不動産を所有している限り固定資産税等の対象になります。
また、管理不全空家等や特定空家等として市区町村から勧告を受けた場合などには、敷地に対する住宅用地特例が適用されなくなることがあります。
4. Q. 兄弟で相続した実家を一人の判断で売却できますか?
共有不動産全体を売却する場合は、基本的に共有者全員の同意が必要になります。
相続人が複数いる場合は、売却活動を始める前に方針を確認しておきましょう。
5. Q. 家具や荷物が残っていても売却できますか?
売却の相談や査定は可能です。
仲介で売却する場合は引渡しまでに撤去が必要になることが一般的ですが、不動産会社による買取では残置物を残した状態で売却できる場合もあります。
■まとめ
相続した実家が空き家になった場合は、大きく分けて、
・売却する
・賃貸する
・保有する
という3つの選択肢があります。
売却すれば管理や維持費の負担をなくせますが、一度売却すると将来利用することはできません。
賃貸すれば家賃収入を得られる可能性がありますが、修繕や入居者対応など、賃貸経営としての管理が必要になります。
そのまま保有する場合は将来自分たちで利用できますが、固定資産税等や建物管理の負担は続きます。
そのため、「売るのがもったいないから残す」だけではなく、
「この家を今後何に使うのか、そのために年間いくら負担するのか」まで考えることが重要です。
まず売却査定と賃料査定を行い、年間の維持費や必要な修繕費を確認すると、それぞれの選択肢を比較しやすくなります。
今後利用する予定がないのであれば、建物の老朽化が進む前に売却を含めた今後の方針を検討してみましょう。



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